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よみもの~中等部編
10 ~hazue

身体の震えが落ち着いてから、
3年1組の教室をドアの小窓から覗いてみた
がらん、としていて、誰もいないみたいだ

かのんちゃん、どこにいるんですか?

もう一度、ケイタイを鳴らしてみる

放課後の誰もいない校舎
微かな音でも、昼間の何倍も響く

モーター音が聞こえる


まさか。。。

まさか!?


かのんちゃんは、ドアのすぐ裏に、ぺたり、と座っていた
泣いたんだろうか?
でも、頬には涙の跡は残ってない

感情のない
人形のような白い顔

どこからあの醜く酷い会話を聞いていたんだろう

「かのんちゃん?」

かのんちゃんは、ゆらりと頭を上げて、にっこりと微笑む

「はずえクン」

どうして笑うの?
なぜキミは笑えるの?

「かのんちゃん、どうしたんですか?」

キミは傷ついて
一人では立っていられなくて

どんなに待っても差し伸べてもらえない
その薫の手を待ってる


それでも


薫の手を欲している


「忘れ物をとりにきて...
 アレ?なんか、寝ちゃってたのかな?」

無理に笑わないで?
僕は兄さんとは違う
僕は、どんなキミでも愛してあげる
僕が守ってあげるから
泣いていいんだよ?
無理して。。。笑わなくてもいいんだよ?

「大丈夫ですか?立てますか?」

「あ、うん、大丈夫...ありがとう、はずえクン」

はずえクンありがとう

そう微笑みながら

僕の向こうに兄さんをみてるんだね?

わかってるよ?
ほんとうに欲しいのは『薫』の手、でしょう?

でもね
キミに手を差し出してあげるのは、薫じゃない
僕だよ?


「ねえ、かのんちゃん...」


それでもかのんちゃんは、兄さんの事が、好きですか?


かのんちゃんは顔を上げ
そして
怯えた目で僕を見るんだ。。。


「かのんちゃん、
 僕は...」


こんなに傷ついて
それでも薫を追うキミ
どうして僕じゃダメなのかな?
どうして
僕はキミの一番じゃないんだろうね?


ねぇ、知ってる?
僕、もうキミよりも背が高くなったんだよ?
いつまでも、ちいさい葉末じゃない
僕だって
キミを守ってあげる事ができるんだよ?
抱きしめてあげる事も。。。

ねぇ、気付いてくれないかな?
こんなにもキミを愛してる僕の事を

ねぇ
どうしたら僕は
キミの『一番』になれる?

「大丈夫ですよ?
 僕は何を言われても
 だから...」

僕の差し出した手を


「だから、気にしないでくださいね?」


僕の手を

キミは握りしめる


何も言ってくれないキミ
その瞳からは、涙があふれて
僕はただ、そんなキミが愛おしくて

抱きしめたくてたまらないのに

でも僕にはそれができない

だって

キミは僕の向こうに
まだ
兄さんをみている

僕の手に触れているのに
キミは
薫の手を感じている


僕が欲しいものは

兄さんの代わりじゃない

でも、キミなら。。。いい

兄さんの代わりでもいい
僕の事を愛してくれないだろうか?

そんな風に考えた
けど
それじゃダメなんだ

だって
だって、


これは僕のプライド、だ


僕自身を、愛してほしいんだ。。。

僕を愛して?

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