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よみもの~中等部編
9 ~hazue

期末テストも終わり、あとは学期末に向けて、
ゆるゆると時間が過ぎていく
いまもまだ、放課後かのんちゃんを迎えにいく習慣は続いている


部活が終わり、片付けをする
音楽室を仰ぎ見、耳を澄ませた
さっきまで聞こえていたピアノの音は、
いつのまにか消えてしまっていた

今日はどうかな?
一緒に帰れるかな?
それとも、もう、かえってしまったかな?

僕は着替えてメールを送る

To;もう下校しましたか?

返信がない

僕は心配になって
昇降口へ向かう

かのんちゃんの靴はまだある


おかしい

レッスンはとっくにすんでるはずなのに


僕はイヤな胸騒ぎをおぼえた
まさかまた、転んだりしてない?
動けなくなってない?

僕はその可能性のありそうな場所を探した
音楽室、階段。。。

どこにもかのんちゃんがいない

どこ?かのんちゃん、どこにいるの?

僕は携帯電話をならす
もしかしたら、ケイタイの呼び出し音が聞こえるかもしれないと。。。
しかし校内では、マナーモードになってるはず
かのんちゃんが『コレがはずえクンのテーマなの』と、聞かせてくれた、
僕専用の呼び出し音がきこえてくるはずはない

それでも、何度も、何度もかけなおす
『もしかしたら』という、その『可能性』にかけて

そのうちに、職員室からかのんちゃんの後輩の。。。近藤さん、だっけ?
彼女が出てくるのが見えた
僕が駆け寄ると、ビクッと肩をいからせて、その場で硬直する
「ねえ、かのんちゃんを知らない!?」
近藤さんは、ただ僕の顔をじぃっとみて。。。怯えてしまっている
まぁ、いきなり呼びつけて、こんな聞き方をされれば。。。ね。。。
ちゃんとわかるように説明するべきだよね、ホント、どれだけ慌ててるんだ
僕はフッと息をついて、笑って尋ねた
「ごめん...さっきまで音楽室でレッスンしてたのはキミ?」
「あ...うぅん、カノン先輩」
「そっか...
 あのさ、かのんちゃんまだ校内にいるみたいなんだけど、
 キミ、知らないかな?」
「あの、忘れ物したって...教室に」
「教室?」
近藤さんは、うん、と頷く
「そう、ありがとう」
僕はあくまで、普通を装う
でも本当は、心臓が破裂しそうになる程、心配なんだよ?
かのんちゃん
どうして電話に出てくれないの?


3年1組の教室がある階につくと、
遠くで誰かの話し声がする

イヤな音だ
キンキンと響いてとても耳障り。。。

近づくに連れて、そのイヤな『音』は意味を持ち出す

。。。?。。。なんだ?この会話は。。。?

  それにしても、さ、菊池さんって...
  もしかして、わざと怪我したとか?

僕は立ち止まった
。。。かのんちゃんが。。。なんだって?

  だって、海堂君の前、ってのが、ね?
  えー、そこまでする?ふつーぅっ?
  わかんないよ?
  飽きられ始めちゃってて、同情ひきたかったとか?
  ヘタすりゃ死んじゃうじゃんっ
  うっわー、それって命引き換えってヤツ?
  チョー情熱的じゃんっ!!
  だからぁ〜、あーいうキャラのコが自殺未遂とかするの、なんだっけ?
  えーっと、狂言自殺?
  それそれっ!
  残念ながら、海堂君には振り向いてもらえてないみたいだけどぉ
  弟君は、ね?

「僕がどうかしましたか?」
その教室の入り口に立って、彼女達を睨みつけた
僕は我慢ができなかった
大好きなかのんちゃんが、侮辱されている事に。。。

「えっ?海堂弟君っ!?」

きゃあ、とか、ごめん、とか、叫びながら、
そこにいた3人は荷物を抱えて逃げて行った

もちろん、怒りもあった
だが、ここまで下衆な事をいわれている事実に、愕然とした
かのんちゃんへの中傷がこれほどの内容だとは想像すらできなかった


握りしめる拳が震える
怒りに震えるって、本当にあることなんだ。。。

それもこれも。。。兄さんのせいだ
かのんちゃんを守ってやろうともしない兄さん
それどころか、自分からは与えなくても
かのんちゃんは兄さんの事を愛し、心の全てを与えてもらえるものだと
そう。。。兄さんは、奢っている

兄さんの傲慢さが、かのんちゃんを傷つける
僕は許せなかった

僕は兄さんを。。。許さない

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