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よみもの~中等部編
8 ~canon

自分のレッスンが終わってから、帰り支度をしていると、
忘れ物をしてる事に気付いた

あまりにも杖に頼りすぎて、手にマメをつくってしまって、困っていると、
リハビリの先生から『自転車用の手袋を着けるといいよ』と言われて、
早速使ってみる事にした
確かに、ハンドルを握るトコにパットが入ってて痛くないし、
滑らないからぎゅぅっと握る事もなくなり、マメもできなくなった


。。。グローブがないと、また手が痛くなっちゃう。。。


教室に手袋を取りに行く途中、隣の教室から話し声が聞こえてきた

  ホント、いい気味よね〜
  それ言っちゃアンタの人間性疑われるって
  ぎゃははっ、そう言ってる時点で、アンタも同じじゃんっ

数人の女子でかたまって、誰かの悪口。。。
女の子がかたまると、こんなのばっかり、イヤになる
さっさと忘れ物をとって帰ろう、と、自分の教室に入った
それでも聞こえてくる。。。会話。。。

  そうでもないかもよ?
  逆にチヤホヤされちゃって、内心、よろこんでるんじゃない?
  ありえる〜
  ああいう地味ぃなコって、こんな事でもないと注目されないしっ

誰かって。。。

  アンタ、それツボりすぎっ
  でもさ、海堂君は全然かまってあげてないじゃん?
  えぇ?でも前からそーだったじゃん?


私、だ。。。


  そうそう、前は桃城君とか不二先輩とか、だったよね?
  今は海堂弟君っ
  マジ、どこがいいんだかわかんないっ
  大してかわいくもないのにねー
  っていうか、地味だし、目立たないし
  そーなんだよねー
  目立つっていえば、一緒にいる西森サン?
  あのコの方が、よっぽどかわいいじゃんっ
  えー、でも、彼女も結構おこぼれとかもらってるしぃ?
  あー!だからじゃない?いっつも一緒にいるの?
  アタシらも、菊池サンに優しくしたら、おこぼれ貰えないかな?
  ばーか、アタシらの事なんか知らないって!
  いきなり仲良くなったら、それこそ、ってヤツじゃんっ
  ホント、それにしたってさぁ
  海堂君なら、よりどりみどりじゃんっ
  だよねーっ?
  ご奉仕上手ってヤツかもよ?案外
  アッチかぁ〜!?
  暗くすれば顔見えないし?
  えー、じゃあ、さ、他の人たちも?
  ちょっとそれしか考えられなくない?
  あーーー!だから今はデキないから、海堂君関心ない、とか?


イライラするくらいの高い笑い声
私だけじゃない。。。
由香ちゃん。。。海堂君。。。
私にやさしくしてくれた人達を、あのコ達は侮辱している

聞きたくない

聞きたくないのに、私はそこから動けなかった

聞こえてくる『コトバ』に縛られた様に動けない


根拠のないウワサって。。。ないんだね。。。きっと


だって
私は海堂君に抱かれた、抱いて、もらった。。。


でも

『つなぎとめるため』に

抱かれたんじゃない


それとも、あのコたちの言うように
つなぎとめるために、抱かれれば。。。よかったの?
だから私、抱かれたいの?海堂君の事が欲しいから?


でも、もう
海堂君は抱いてくれない
抱いて欲しくて、伸ばした腕も拒まれた



聞きたくなかった

だって

だって。。。

あのコ達が言ってる事は事実だもの
海堂君はもう私の事なんかいらなくなった


抱かれたからって、海堂君は『私のもの』にはならない、って、
私、知ってる。。。



ケイタイが、バッグの中で、ぐずぐずと音を立ててる
わかってるのに、手がとどかない


私、はずえクンのことが好き
由香ちゃんが好き
桃城君も好き
高等部にいる不二先輩達も好き

でも

私のせいで、みんなが、侮辱。。。された。。。

どうして、なの?

どうして、私のせいでみんなが傷つくの?


それは『いけないこと』だから



好きになる事は

いけないコト

だったんだ



まだ聞こえてくる話し声
言葉の意味さえわからない
ただわかるのは

私が悪い

ってコト。。。



みんなと仲良くなれて、いい気になってたのかな?
不二先輩達によくしてもらって、いい気になってた?
自分が海堂君にとって、特別だって
いい気に。。。なってた

いい人ぶって、知らないフリして
作り笑いを浮かべて

それが周りの癇に障ったんだね、きっと

他人を傷つけるつもりなんてなかった
怒らせるつもりなんてなかった

でも、私も一生懸命だった
海堂君に嫌われたくなくて
海堂君と、一緒にいたくて


嫉妬されて
それでも、自分は特別なんだ、って、
特別だから仕方がないって

本当は



自分の為に、自分が特別だって思う為に我慢してきた

我慢すればいいと、そう思ってた

海堂君が傷つく事も、仕方ないって、きっとどっかで思ってた
私の為に傷つく。。。
だって、しょうがないじゃない、私は『特別』なんだもの。。。

そう、奢っていた



大きな嘘

小さな嘘

たくさん、たくさん

嘘をついてきた



嘘つきは罰を受ける



小さな罰

大きな罰

たくさん、たくさん



最後に立ち上がれなくなる程の罰を

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あきゅろす。
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