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よみもの~中等部編
3 ~hazue

かのんちゃんが学校に出てきた週の土日は、地区の新人戦だった
僕の初めての公式戦になる
かのんちゃんから、由香先輩と一緒に応援に来る、
というメールを貰った僕は、うれしくて、すぐに電話をかけた

「かのんちゃん、本当に!?」
(気分転換にもなるし、歩くのもリハビリって思って)

電話の向こうで、くすくすと笑うキミ
どうしよう、叫んでしまいたい程うれしい

「じゃあ僕、絶対勝ちますよ!」
(ハイ!えぇと...試合は...)
「オーダーは決定じゃないけど、多分シングルス2、です」
(スゴいのね?
 じゃあ、はりきって応援に行きますね?)

張り切るのは僕の方だよ?
どうしてキミはこんなに僕を喜ばすのが上手なんだろうね?


試合会場でかのんちゃんと由香先輩の姿を見つけた
本当は、おもいっきり手を振って、駆け寄って、
がんばります!って言いたいんだ
でも、他のメンバーの手前、我慢するしかない
僕はかのんちゃん達に、笑顔だけ向けた
それに気付いた由香先輩が、ガッツポーズで、
ハズエ君がんばってー!と、すごい声で応援してくれる
そして、その声に、周りがざわついて、かのんちゃんがあわてる
たけど。。。由香先輩はおかまいなし、だ
まぁ、それが由香先輩所以、ってヤツなんだけどね
僕は、ちょっとだけ手を上げて照れ笑いを添えてそれに応える
ね?これなら、キミもそんなに気まずくはならないでしょう?

さあ、試合だ
そう、僕もね、シングルス2ですよ
兄さんのデビュー戦と同じ
あの時兄さんは負けてしまったけど、僕は絶対に勝ちます
まずは、そこから、でしょう?
まずは、一歩先へ
そして、確実に兄さんを追い越さなきゃ、ね?

僕はバッグからバンダナを取り出し、ぎゅっと頭に巻く
今まで、こんなもの着けた事はなかった
だから今日に限って何でだ?って、先輩が笑う
僕は笑って答えるんだ

「ハッタリ、ってヤツですよ
 こうすると、兄さんにそっくりでしょう?」

みんなが一瞬言葉を失った、が、
竜崎先生が、心理戦、ってヤツかい?と、大笑いすると
みんなが笑い出し、一気にリラックスしたムードになった

ホントはね、バンダナなんて着けたくない
ホントは。。。
兄さんに似てるって言われるのがイヤなんだ
だから、バンダナなんて絶対着けたくなかった
だってそうでしょう?
なおさら兄さんにそっくりだって、言われるじゃない?

でもね、僕は僕だ
どんなに姿が似ていても、僕は兄さんとは違う
その事をキミに知って欲しい
いや、今更だよね?
キミはいつも、僕と兄さんは違う、って感じてくれる
僕だってそれはよくわかってる
だから
だからこそ今日は、わざと兄さんとそっくりの姿で、
キミに僕の試合を観せてあげる

薫とは違う『僕』を

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あきゅろす。
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