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よみもの~中等部編
1 ~canon

しぶしぶだけど、リハビリをがんばった甲斐もあって、
少しずつだけど、膝は曲げ伸ばしのできる範囲が広くなってきた
杖を使う事にも慣れて、やっと、階段が登れるようになって、
どうにか学校に戻れる状態になり

私は怪我をした翌々週の土曜日に退院した


月曜日は、お父さんとお母さんに連れられて、車で登校した
お父さん達と一緒に職員室へ
担任の先生と保健の先生へ、経過や今後の事、
そして学校生活での事を話した

職員室を出ると、由香ちゃんと桃城君が待っていてくれた
お母さん達は、由香ちゃん達に、
たくさん迷惑をかけるけど、
よろしくね、と言って、帰っていった
由香ちゃんはいろいろとお世話をしてくれて。。。
例えば、下駄箱
私のは下の方にある
何度もしゃがみ込まなくてもいいように、と、
上の方にある自分の下駄箱と交換してくれた
桃城君は、荷物を持とうか?と言ってくれた
だけど、自分でできるようにならないといけないから、と言うと
そっか、甘やかしてたんじゃ、
いつまでたっても、慣れないもんな?、と笑った
桃城君のアッサリとした態度が、ヘンに気を使わなくていい

校内では、いままで何とも思ってなかった廊下や階段の手すりが、
こんなに必要なものだったとは気がつかなかった
特に階段では、手すりに掴まらないと、怖くて上り下りなんてできない

まだ早く歩けないから、
教室移動の時は、授業には遅れてしまうけど。。。
先生もその事に関しては、目をつぶってくれてる
由香ちゃんはもちろん、クラスの女の子達も助けてくれる
本当にありがたいと思う


火曜日は、お母さんと二人で電車に乗って登校してみた
乗り換えの時が少し不安だったけど、
不細工で大袈裟な足の固定具と杖のおかげで、
私が『怪我人』というのは、一目瞭然だからだろう
周りの人たちが、気を使って、私から少し離れてくれるから、
人の流れにもみくちゃにされる事はなかった

家から乗り換えの駅迄は、余裕があって座る事ができるけど、
乗り換え後に座れた事なんて一度もなかったから、心配をしていた
もちろん何かに掴まっていれば、立っていられる
だけど、特に混んでいる電車の中では、掴まる所もなければ、
杖を使ってバランスをとるのも難しかった
お母さんに身体を支えてもらっても、やっぱり揺れるし
左足に踏ん張りが利かないから、もう無理かも、と思い出した頃、
横にいた会社員風の女の人が私を支えてくれて、
それに気付いた人が、席を譲ってくれた
申し訳なくて何度も何度も頭を下げて、逆に恐縮されてしまった

放課後は、退院後初めてのレッスン
優先輩と瑞希ちゃんは、ケーキを用意してくれていた
瑞希ちゃんは今日はレッスンないけど、
お祝いですから、と、一緒にケーキを囲む
先生も、紅茶を入れましょうね〜と、
自前のポットとカップを音楽室に持ち込んで、
私の退院祝いをしましょう、と、笑ってくださった

優先輩は、中四国では、高校生部門で一位を獲られた
おめでとうございます、一年生で一位
やっぱり優先輩はスゴいですね
そう言うと、少しだけテレて、
めぼしい奏者がいなかったんだよ、
受験シーズンだし、ね、と苦笑い
それでも、一位はすばらしい
先輩のリスト。。。聴きたかったな。。。


どうにか一人で登校できそうかな、と、
水曜日からは一人で電車に乗った
乗り換えの駅では、最後に車両に乗り込んで、
ドア横の持ち手と、ドアに身体を預けて、どうにか凌ぐ
青春台に着く頃には、右足が震えてしまうけど、
いつも席を譲ってもらえる事を期待するわけにもいかない


沢山の人たちが、親切にしてくれる
クラスメートたちが、助けてくれる
由香ちゃんと桃城君が、応援してくれる
はずえクンが、支えてくれる


ただ

海堂君がいない

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あきゅろす。
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