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よみもの~中等部編
1 ~yuka

火曜日、ノートのコピーを送ってすぐ、カノンから電話があった

「どうしたの?ちゃんと見えない?」

(ううん、違う助かってるよ♪木、金は、学校に行くからね)

いつもの『相手の気をとことんまで抜いてしまう』ような、
なーんにも考えてないような明るい声

「退院?」

(まだ、だけど、一時外出でテストだけ受けに行く事になった〜)

「へぇ、じゃ、少なくとも英語は救われる訳だ」

(そうそう)

電話の向こうで、カノンがにっへにっへと笑ってるのが、
簡単に想像できる

「でも、カノン自分では...来れないよね?」

(うん、お母さんに車で連れてってもらって、
 テストも教室じゃなくてどこか、1階の部屋で受ける
 まだ階段登れないし、へへっ)

「そっか...でも、よかったじゃんっ」

(うんっ)

「海堂君には知らせたの?」

(えっ?)

「知らせた?海堂君」

(...ううん...でも、別に...いい...)

私が『海堂君』と言った途端に、声が変わる


「何で?」


カノンは電話の向こうで黙り込んでしまった
わかってる、そこには触れて欲しく無いって、ね
何年親友やってんのよ、ばぁ〜か
だからこそ、アンタ達にははっきりしてもらいたいの


(あっ、あのねっ!
 木曜日は職員用の玄関から出入りするし、
 ホームルームとかも行けないから会えないかもしれないけど、
 一応、私学校に来てるって由香ちゃんには知らせとこうかなって)

「そっか、うん、わかった...何時頃学校に来る?」

(ちょっと早めに着く様に行くと思うけど、
 ホラ、やっぱり、他の生徒の手前...ね?)

「そりゃそうだ〜、そんじゃ私も早めに着くように家でるから、
 職員用の玄関で待っててもいい?」

(いいの?)

「あったり前じゃんっ」

(じゃあ...私が先に着いたら、メールするね?)

「了解っ」

(じゃ、木曜日ねっ?)

「うん、しっかり試験勉強しときなっ」

(ハイハイ、ノート、非常に助かってますっ)


明るく電話を切ったものの。。。
ハァ、と溜め息をついて、そのまま、メールを打った


To;カノン、中間テスト受けに来るって

 Re;退院?今、電話いいか?


桃城君へ電話、ワンコールがおわらないうちに、すぐに電話に出る

(おぅ、カノンちゃん、退院するのか?)

「一時外出だって
 お母さんに車で連れてきてもらうらしいよ?」

(へぇ...でもよかったじゃん)

「そ!カノンもね、英語コレで何とかなる〜って、笑ってた」

(確かになっ!?)

こっちも、にししししっ、って笑ってる顔が、
カノン以上に想像できてしまう

「で、ね...」

(海堂か?)

流石、自称カレシ。。。

「うん...海堂君に知らせたの、って聞いたら
 別にいい、って...黙り込んじゃった」

(はぁーーーーーーっ、何やってんだろうな、アイツら)

ざわざわって、電話が鳴った
きっと、頭をがしがしかいてるんだろう

「まったくね...」

(俺から...は、やっぱりマズいか...)

「どうかな...
 カノンがそこまで考えて私に電話してきたとも思えないしね」

(どういうことだよ?)

「だからぁ、私に電話したら、私が桃城君に知らせて、
 桃城君から海堂君に伝わる、なんて、考えてない、って事」

(そっか...でも、アイツら親同士も仲いいっていってただろ?
 おばさん経由で伝わるんじゃねぇか?)

「あ、ナルホド...それもそうだよね?
 んじゃ、そこまで心配する事もないのかな?」

(ま、どっちにしても、俺達にできる事なんてないしな...)

「ないのかな?」

(ないだろ?)

ちょっと怒ったカンジ?
不機嫌とも違う、こう、なげやり、っていうの??
そんな声と雰囲気が伝わってきた

「そうか...
 また、カノンのじめぇ〜っとした顔見なきゃダメなのか、ヤレヤレ」

(まったくイヤになっちまうぜ...
 カノンちゃんが落ち込むと、ユカちゃんまで落ち込むだろ?
 カレシとしちゃ、やっぱりどうにかしてやりてぇ、ってもんだろ?)

にひゃひゃっ、と笑う声が聞こえる
こんなときでも、雰囲気作るのがウマい

「まだ言うか、アンタはっ!」

(ひひっ!
 でも、俺な、ユカちゃんが落ち込む所見たくねぇし)

「あーーーーーーーっ、もう!!!
 いっその事、カノンも海堂君の事ほっときゃいいのにねっ!
 海堂君も海堂君でハッキリしないしっ、あーーーイライラするっ
 そーよっ!!どうせなら、ハズエ君の方がいいよ!!!
 素直だし、やさしいしっ!
 なによりも、ハズエ君もカノン大好きだし、
 カノンもハズエ君大好きだしっ!!」

(オイオイ、そりゃねぇだろ?)

「そう?
 でも少なくとも...
 今みたいにカノンが落ち込む事は無くなると思うよ?」

(だからって...)

「...だからって、割り切れない...
 わかってるわよ、それくらい...アノ二人は特別よ...」


そこからあとは、二人しておもぉ〜い沈黙
ぽつ、と、桃城君が、じゃ、明日な、と言ったのを合図に電話を切った

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