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よみもの~中等部編
21 ~canon

院長先生とみんなが部屋を出て行ってから、
マッキー先生は苦笑いをする
「うわぁ〜〜〜...カレシ君、クールだねぇ〜」
「テレ屋さんなんですよぉ〜
 二人だけの時はもうラブラブでべ〜ったりですもの」
「お母さん、それ、イロイロと誤解されるからやめて」
それに、ラブラブでも、べったりでもない
私が勝手に。。。そう、勝手に海堂君におぶさっていただけ。。。

リハビリの先生がにっこりと笑う
「それじゃ、はじめましょう〜
 まずは、奏音ちゃん、ベッドの右側に移動しながら、
 右足、ベッドから下ろして...そう
 そして、自分で左足を抱えてゆっくり下ろして...
 うん、イイネ...どっか痛む?」
「いいえ...特には」
ホントは、足を抱えただけで、脇が軋んで痛い

「左手は、ベッドのバーをもっててね...
 あれ...腕挙げたら痛いかな?」
「いえ、大丈夫です」
 右手、杖もって...うん
 じゃ、右足と杖に重心かけて、立ってみよう」
先生に言われた通りに。。。
でも、できるだけ、左側に体重が乗らないように立ってみた

身体のバランスがヘン。。。
「ハァ...立てたぁ...」
ベッドから降りるだけで大仕事
今迄は、看護士さんやお母さんが、手伝ってくれて、
トイレに行くのだって、自分の力で立ち上がる事はなかった
まぁ、バスルームも部屋の片隅にあって、
歩いた所で、5、6歩ってだけなんだけど。。。
それだって、トイレシートがついたコロ付きの椅子に乗って、
トイレ迄ごろごろごろ。。。
シャワーだってそのまんま全部できちゃうって、便利よね
。。。って、今そんなトコに、感心してる場合じゃない
ちゃんとバランスとって、立たなきゃ。。。
それに、実は胸が痛い。。。けど言えない
痛いって言ったら、そこで、ピアノがダメになる

「はい、上手にできました!
 さて、奏音ちゃん、病室の外に車いすが置いてあったりするんだけど
 そこまで歩こうかな?」
「え...っと...」
「うん、ウマい具合に、肋骨も左だしね、右手で杖を上手に使って、
 お、なかなかヤルじゃん」
右足にトン、と体重が乗った瞬間、左脇に火がついたような痛みが走った
「アレ、痛いかな?」
「ちょっと...」
ホントはスゴく痛い、さされてるみたいな痛さって、きっとこんなだ
「でも、我慢できない痛さじゃない、です」
うそばっかり。。。歩くだけのインパクトで、こんなに痛む
「そっか、じゃ、ちょっとだけ、ズルしてみようかな
 杖、ね、コッチのカッコいいヤツ使ってみようか?」
リハビリの先生が渡してくれたのは、普通の脇で支える松葉杖とは違う、細くて短い杖
ハンドルを持つと、肘の下で杖を固定できるように、
サポートとベルトがついてる
あ。。。すごく楽。。。それに、軽い。。。
「どう?」
「すごく、楽...です」
「ははっ、そりゃ、ね...値段もすっごく違うけど
 奏音ちゃんの場合だと...少なくとも2ヶ月くらいは使わなきゃいけないし、
 こっちのほうがいいですよね、お母さん?」
「ハイハイ、おっしゃる通りに」
みんなが笑う
「はい、僕がちゃんと支えてるから、心配しなくてもいいよ」
そう言って、腰に巻いた帯締めのようなものをしっかりと支えてくれていて、安心感があった
歩ける。。。私、歩ける。。。
「ほ〜ら、もうついた、どう?ピアノの所まで歩いてみる?」
「ハイ!」

実はもう、いっぱいいっぱい、なんだけど。。。
でもここで弱音を吐くと、ピアノを弾かせてもらえないんじゃないかって、
そればっかり頭に浮かぶ

リハビリの先生が言う通り、なるべく跳ねないように、
ゆっくりと右足を下ろすように歩く
脇も痛いけど。。。怖くて、左足に力を入れる事ができない
少し慣れてきた、けど、それでも痛いのは変わりない

私はリハビリの先生と、お母さんと三人で、ゆっくりと歩いた
自分で歩ける、これなら、ピアノだって。。。

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