よみもの~中等部編 20 ~kaoru 部屋に入ると、かのんの明るい顔がある どうしたんだろう?さっきまでと顔つきが違う だが、じきにそれを理解した おばさんと、さっきのかのんの担当医、そしてあと二人。。。 この病院の院長とリハビリ医が病室へ訪れ、 サロンのピアノを弾いてもいいと、かのんに告げる かのんの喜び様に、病室にいた全員の眉が下がる 俺だって、その一人だ 葉末達が、がんばれ、とかのんを励ます だけど、俺は『がんばれ』と、かのんに言う事ができない そのコトバに、いつも無理をして傷ついてきたかのん そのコトバに、いつも追いつめられてきたかのん たとえフィジカルな事であっても、そのコトバを使う事を躊躇してしまう 「俺、先に下に行ってるから...」 「なんだよ、冷ぇヤツだな」 桃城は眉根をよせて、俺を睨む 「部屋ん中に大勢いたんじゃジャマだろ?」 その視線に耐えられなくて、 舌打ちしそうになるのを必死に押さえながら、 おばさん達に会釈をして部屋を出た すぐに桃城達も俺に追いついた かのんのピアノがどうとか、やけに明るく会話をするアイツらに、 俺は背を向け、イライラしながらエレベーターを待っている 一人で拗ねて、いじけて。。。 バカみてぇだ、俺 [*前へ][次へ#] [戻る] |