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よみもの~中等部編
16 ~canon

桃城君達が病室を出て行って、
しばらくの沈黙のあと、海堂君はぽつ、とつぶやいた

「すまなかった...」

何が?
何に対して謝罪をするの?

「俺...その」

「海堂君、何も悪くないよ?
 コレは、私の不注意、だから...
 私がぼけーっとして、転んじゃっただけだもん」

こんなときにも、いい人ぶって。。。イヤな私。。。

「俺...」

「海堂君とはずえクンが、付き添ってくれたんでしょ?
 お母さんも、助かった、って言ってたよ?ありがとうね?」

「すまねぇ」

小さく発せられた声に、気付かないフリをして。。。
どんどん勝手に、自分の言いたい事だけを。。。言葉をつなげる

「来週末の中四国のコンクールは、出られそうにないけど...
 でもね、あきらめられなくて、出たいってだだ捏ねたら、
 お医者さんにまで、怒られちゃった、ははっ」

海堂君の腕が伸びてくる

何がしたいの?
海堂君だって、もうこんなのたくさんだ、って
私の事で我慢するのはたくさんだって、そう言ったじゃない
それなのに、こんな事する海堂君がわからない
何が欲しいんだろう、この人は。。。

そして今更、って思うのに
それなのに、期待してしまう私だって、相当バカ、だ

同じ事を繰り返す

期待させておいて、やっと伸ばした私の腕を拒む
ねぇ、知ってる?
海堂君。。。拒まれた時のそのむなしさを。。。


頬に触れた海堂君の手の感触に、嫌悪感が走った

「やめてっ!」

ビクッと手を引っ込める海堂君
そして、またイヤな沈黙が続く

「ぁ...ごめん...
 あの、いつみんなが戻ってくるかわからないよ?」

「かのん」

「それにしても、みんな遅いなぁ〜
 ホント、どこまで買いにいったんだろうね?」

「かのん!」

「なんか私ものどかわいてきちゃった」


「頼むからっ!!」


海堂君の鋭い声

怖くて、泣きそうになる


でも動揺を悟られない様に、平然と言い放つ

「...何?」

「頼むから...
 もう、やめてくれよ...」

「何を?」

「そうやって、お前、我慢して...何になる、ン、だよ...」

「そう、ね...
 私もいい加減、イヤになっちゃう
 どうせがんばった所で、誰も認めてくれない
 いつだって、バカを見るのは私」

ウソつくのがウマくなった

「お前...」

「海堂君も、でしょ?
 もうイヤになっちゃってるんでしょ?
 私のせいでいろんな事言われて
 我慢してまで、一緒にいる程の価値、私にはないでしょ?」

なんでもないと、表情を作るのもウマくなった

「違う
 俺、俺は...」

それなのに、

「...もう...」

『来ないで』。。。
次の。。。続くべき言葉が出てこない

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あきゅろす。
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