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よみもの~中等部編
14 ~canon

「お見舞い、いっぱい頂いたから...たくさん食べていって?」
そう言うと、桃城君は、まかせろ!と目をキラキラさせる
はずえクンも、一緒になって、
かのんちゃん、どれが美味しいですか?なんて、
おやつを物色し始めた
「お、コレ、ウマそうじゃん、由香ちゃん、食うか?」
「兄さんはどれにしますか?」
屈託のないはずえクンの声
だけど私は『兄さん』という言葉に、イヤというほど、反応してしまう

「そういえば、カノンちゃん、いつ頃退院?」
海堂君のお母さんが焼いたパウンドケーキにかぶりつきながら、桃城君が尋ねる
「あーーー...お医者さんは2週間くらいって言うんだけど、
 経過次第、だって」
「早く退院できるといいですね?」
フィナンシェの包装をといて、私に渡してくれるはずえクン
「そうなの、もうピアノに触りたくて触りたくてしょうがないの」
「禁断症状ってヤツ?アンタ、なんか中毒患者みたい」
マドレーヌをもぐもぐしながら、由香ちゃんが呆れた声を出す
「あーそーーーかも...
 こんなにピアノ弾かないって、修学旅行以来?」
「それだって、3日だろ?」
桃城君〜、そんな呆れたって顔しないで〜
「あの時もね、飛行機の中で指がバサバサ動いてたのよ、この子!」
由香ちゃんは大袈裟に腕を振り回しながら、指を空中でバタバタさせる
いやいやいや、そんなに動かしてないからっ
「しょっ...しょうがないじゃないっ
 無意識にそうなっちゃうんだもん」
「カノンちゃん、それ、中毒患者...だ」
桃城君がニッ!と、意地悪い顔で笑った
「ハイハイハイ、認めますっ!」

「でもさぁ...そうなると来週の中間テストどうなるの?」
由香ちゃんは二つ目のマドレーヌの包装を解きながら、
アンタもコレ食べる?おいしいよ?と、私に勧めてくる
うん、それ、おいしかったよ確かに。。。
「うぅ〜ん...ビミョウなのよねぇ...」
もぐもぐ、フィナンシェよりもこっちが好みかな。。。
「それって、テスト受けなくてすんでラッキーじゃね?」
もう3個目のおやつを物色し始めた桃城君が、ニカ!と笑う
「ちがうな、桃城君!
 中間テスト受けないと、2学期の成績、英語赤点確実なのよっ!!」
「かのんちゃん、ソレ本気で言ってるんですか?」
眼を丸くして、顔をあげたはずえクン
そのはずえクンに由香ちゃんは、指をぴっぴっと振って、
かなり渋い顔で、はずえクンの顔を覗き込んだ
「はずえクン、キミはカノンの事、美化し過ぎっ
 カノンの英語の成績なんて、悪い、とかそんなレベルじゃないのよっ」
コラ、桃城君、由香ちゃんのカゲで笑わないっ!
「由香ちゃん、ソレ言い過ぎっ」
「あれ?そうだっけ?壊滅的ってコトバの方がよかった?」
ふふん。。。って、笑うしっ
「う...言い返せない自分が憎いっ」

またそれから、おやつを物色し、バカな話で盛り上がる
でも、その間、海堂君は一言もしゃべらなかった
イヤそうに俯き加減で
はずえクンに渡されたおやつにも手をつけてない

そんなにイヤなら。。。
そんなに私の顔を見たくないなら、来なきゃいいのにね

それとも、
海堂君の姿を見て期待してしまう私を見るのが面白いの?
それとも、
海堂君にこんな顔されて、私が惨めになる姿を見たい訳?

海堂君、イジワルだよ、それ。。。

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