よみもの~中等部編
13 ~canon
入院3日目、土曜日の午後
由香ちゃんと桃城君がお見舞いにやって来た
「よっ!けが人!!ヒマしてる!?」
由香ちゃんらしい第一声に、自然に笑顔になれる
「智子ママ、こんにちは」
「あら〜っ!カッコいい男の子がいるっ!!
由香ちゃん、カレシっ!?カレシつれてきたのっ♪」
お母さん、桃城君を見て、大はしゃぎ、だ
それでもって、桃城君もいつものノリで元気に挨拶をする
「ハイ!桃城です、由香ちゃんのカレシで..ってぇっ...
なにも殴んなくてもいいだろ?公認カノジョ」
由香ちゃんは、見事なボディブロゥを桃城君にお見舞いしてる
「違いますよ〜、コレは『自称カレシ』で、
私は『誤認カノジョ』という設定です」
そして、みんなで笑い合う
一気に部屋の空気が暖かく、明るいものになった
お母さんは由香ちゃん達に椅子とお茶、
そしてお見舞いに頂いたおやつをすすめて、
ちょっと買い物に行ってくるわね、と、病室を出た
「コレ、昨日とおとといのノートのコピー」
「わ、助かるっ」
「カノンちゃん、コレ、俺達からお見舞い、な?」
そう言って渡してくれたのは、購買で売ってるのと同じプリン
「ありがとう♪何で私が食べたいものがわかったの?」
「由香ちゃんが、な、
カノンちゃんはいっつもプリンだのヨーグルトだのを食べてるから、
丁度食べたいんじゃないかな?って...な?」
桃城君の、カラッと笑った顔に、由香ちゃんもへへっと笑ってこたえる
。。。いいな。。。
私には無理だ、こんな笑顔。。。作る事できない。。。
それもあたりまえ、よね
由香ちゃん達は、心から笑い合ってる
作ってるんじゃない。。。
所詮『作り物』は、『作りモノ』でしかない。。。
「どうしたぁ?」
桃城君は私の目の前で手を振って、顔をのぞきこんでいる
「え?あぁ...うん、なんか由香ちゃんと桃城君って、
お似合いだなぁ〜って、みとれてた♪」
「うわぁ...ソレって、最悪、っていわない?」
「ひでぇなぁ...由香ちゃん
俺、こ〜〜〜んなに、由香ちゃんのコト愛しちゃってるのに」
「げっ!ヤメれっ!ソレ、すっごくキモチワルイからっ」
こぉ〜んなに、って、両腕を力一杯のばす桃城君に、
由香ちゃんは、手をヒラヒラさせて、アッチいけ、っていうジェスチャー
ホントに面白い二人
「つれねぇなぁ、つれねぇよ...
お...そういや、海堂達まだか?来るっていってたのに?」
背中がビクッとした、けど、気付かれてないよね?
コルセットでガチガチ、だもん
「多分...もうすぐ来ると思うよ?
さっきはずえクンからメールもらったから」
「アレ、院内でケイタイって、いいんだっけ?」
「ナイショ♪」
そしてまたしばらく、由香ちゃん達のコント、じゃなくて、会話をききながら、
お見舞いのプリンを食べていると、お母さんと海堂君達が病室へ入ってきた
はずえクンは綺麗にラッピングされた、フラワーバスケットを手渡してくれる
サーモンピンクのガーベラと、薄いピンクのカーネーションのアレンジ
お見舞いで頂いたお花の中で、一番ホッとする色合い
私は海堂君のお母さんとお父さんに、お見舞いのお礼を言い、
二言三言、会話を交わす
はずえクンは、桃城君達に挨拶をして、ベッドの反対側へと移動し椅子を取り出して座った
そして海堂君は。。。俯いて、私の事をみようともしない
はずえクンはもう一脚椅子をだして、兄さん、ここに座ったらどうですか?と、
私のすぐ横に座るように、海堂君へ促した
あぁ、とちいさくつぶやいて、顔も上げず腰をおろす
。。。一言も。。。何も言ってくれない
「それじゃ、お母さん達は下でお茶してくるから、
若者は若者同士で盛り上がっててね」
そう言って、大人3人は退出した
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!