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よみもの~中等部編
12 ~kaoru

かのんが入院して3日目、土曜日
今日の午前中は部活があった
もちろん俺は自主練だが、葉末と一緒に登校した

部活が終わり、帰り支度をしていると、
同じく自主練参加していた桃城が、かのんの見舞いの話をしてきた
「おぅ、今日俺、ユカちゃんと昼から見舞いに行くんだけどよ」
「僕達もですよ?先輩は何時頃行かれますか?」
俺はなるべく会話に入らなくてすむ様に、一歩後ろへ下がり、
顔を背け、わざとのろのろと着替えをする

朝から、いや、昨日の晩から俺はすでに気が重かった
もちろん、俺はかのんに会いたい
アイツの顔を見たい
だけど。。。
どんな顔をしてあえばいいんだろう?

「...............」
「..........」
「..........
 ...おー...お前らは花か?」
「えぇ、そうなんです...
 朝、出掛けに、母さんから頼まれて...
 桃城先輩はどうするんですか?」
「ん?ぁあ...ま、ユカちゃんが、な...
 なんかいいモンがあるから任せろって...」
「へぇ、なんでしょうね?」
「イヤ、俺もよ、よくわかんねぇんだけど、な?」
「......」
「..........」

葉末と桃城の明るい声が、俺の背中に張り付く

「兄さん、かのんちゃんのお見舞いの花、何がいいですか?」
葉末の声が、心なしか訝しんでいるようにきこえた
「え?あ...あぁ、なんでも...」
見舞いの花、か。。。
アイツは花よりも、プリンとかヨーグルトのほうがきっと喜ぶ。。。
いつも学校で食べてた
とても旨そうに。。。
そんなかのんを最後に見たのはいつだっただろう?
もうずっとみていない


自宅最寄りの駅前の花屋で、見舞いの花かごを作ってもらう
花の名前なんて良く知らない
俺と葉末はどうしようか、と、店先にある花を眺める
何にしましょう?と、尋ねる店員に、
葉末は、見舞いに持って行く花を、と説明している

オレンジがかったピンクの花に目がとまった
沢山花びらがついていて、俺が知ってる花でいうと、
マーガレットに良く似ている
でも、マーガレットよりは花びらも多いし、
どっちかっていうと、小型のひまわり?
いや、ひまわりにしちゃ、花びらが長いし真ん中も小さい
「あの...コレは?」
この花の名前を知りたい、と、思った
いつもなら、思うだけで、やり過ごす所なのに、
つい口を開いてしまった事に、自分でも驚いた

「ハイ?どのお花ですか?」
「え、あの...コレは見舞い用には...」
見舞いに向いてない花だったら困る、と、
適当な言い訳をするつもりだが、
なんだかドキドキしてしまって、うまく言葉が繋がらない
「ああ、いいですね、ガーベラ...元気がでそうでしょう?
 これで作りましょうか?」
「ホントだ、この花、かのんちゃんにピッタリじゃないですか?
 この花でお願いします」

あぁ、そうだ、俺もそう思った
かのんに似合いそうだな、って。。。
だから、名前を知りたくなったのかもしれない


病院に向かう車の中で、父さんと母さんは、
カノンを見舞った後、そのまま買い物に出る、と言う
「じゃあ、僕はかのんちゃんの所で母さん達を待っててもいいですか?」
「そうね...
 でも、あまり長くお邪魔すると、かえって疲れてしまうかもしれないわ」
「あ、そうか...じゃあ、様子をみてから、ね?いいでしょう?」
「本当に葉末は、かのんちゃんのことが大好きなんだねぇ?」
車の中での明るい会話
俺は薄く笑いを浮かべてみせるだけ

なるべく会話に入らなくてもすむように、
ぼんやりと外を眺める

足を組み直したとき、カサっと音がした
俺の横に置かれている、花かごに触れてしまったようだ

オレンジがかったピンク色のガーベラ

花。。。気に入ってくれるだろうか?

気に入ってくれるといいな。。。


せめて花だけでも。。。
快く受け取ってくれるといいな。。。

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あきゅろす。
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