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よみもの~中等部編
10 ~kaoru

俺は、ただ、座っていた
何もできずに

なにも、できない。。。

葉末が俺の腕をとり、病室に行きましょう?という
かのんに会いに

俺はどんな顔をしてかのんの前に立てばいい?

ベッドの上で、身体を起こしているかのん
薄い病院のガウンを着せられて、
細い肩をがっくりと落としている

おばさんが、その肩へ綺麗なレースのストールをかけると、
うつろな表情のまま、俺達へと顔を向けた
俺、どんな顔してればいい?
俺、お前の事、どんな顔してみればいいんだよ?
それすらもわからない。。。嫌気がさす。。。本当に

「コンクールっ!!!」

俺と目が合った瞬間、いや、視線があったような気がした瞬間、
かのんは叫んだ

「コンクール、じゃないわよ...」
「だって!もうすぐ!!
 私帰る!ピアノ練習しなきゃっ!!!」

お前。。。何言ってるんだよ?

「無理言わないの」
「指は動くもんっ!弾ける!!帰るっ!!」

。。。お前、おかしいぞ

「無理...するな、よ...そんなに無理しなくたって」

ピアノは楽しいんじゃなかったのか?
いつも幸せそうな顔して弾いていたじゃないか

「海堂君にはわからないわよっ!
 海堂君には...いつも結果を出してきてる海堂君にはっ!
 私が、どれだけっ...
 私だって、できるって...
 できるって証明してみせるしかないじゃないっ!!」

証明?
何の証明だよ?

「お前...何言って...」

かのんの顔が、歪んでいく
痛みの為か?
それとも、俺に対する怒り、か?

「そうよ!言うのは簡単よ!!!
 でもねっ、私だって、いっぱい我慢して」

何でお前が我慢しなきゃいけないんだよ?


「俺だろ!?
 俺のせいだって言えよ!!
 お前はいつもそうだ
 そうやって、
 がんばり続けなきゃいけねぇって!!」「薫、いい加減にしなさいっ!」

どうして、自分の為に。。。
もっと自分の為にがんばる、って言わないんだよ?
俺のせいだろ?
俺が、情けねぇから、お前を守ってやれないから

「もうやめろよ、やめてくれっ!!」

何故俺のせいにしない?
何故お前を守れない俺を責めない?
もうやめてくれ

「もう沢山よっ!!」「奏音ちゃん!よしなさいっ!!」
「海堂君にはわからないっ
 私がどれだけ惨めな気持ちになってるか
 我慢してるんかなんて、わからないでしょ!!!」

「お前だってわかってねぇっだろっ!
 俺だって、俺だって息が詰まるんだよっ!!」

なんでわからねぇんだよ!?
そんなに自分を追いつめて、何を得るんだよ?
俺、お前に無理させたい訳じゃない
無理するお前なんか見たくない
お前は、そのままでいいのに
それなのに、自分を痛めつけて
もうヤメてくれよ
俺、そんなお前なんか見たくない

頼むから。。。やめてくれ。。。

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