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よみもの~中等部編
8 ~hazue

かのんちゃんに付き添って、救急車で先に病院についた養護の先生は、
彼女のおおまかな容態を教えてくれた
そして、さっきかのんちゃんにかけてあげた僕のシャツを、
ゆったりと笑って、よく気がついたわね、ありがとう、と、手渡してくれた

「すみません、家に電話をしてきたいんですが」
そう僕が申し出ると、養護の先生は、そうね、と、また、やさしく笑ってくれた

「母さん、葉末です」
(どうしたの?こんな時間に?)

僕はかのんちゃんが怪我をして、病院に運ばれた事
そして簡単に、今の状態を説明した
母さんはすぐに、かのんちゃんのお母さんへ連絡を取る、と言ったが、
連絡は学校からもう行ってるはずだから、
とりあえず、僕と兄さんの着替えを持ってきて欲しいと頼んだ
返してもらったシャツは、着るにはシワが目立ちすぎる
それにさすがに、制服のシャツの下に着ていた、Tシャツの上に、
部活のジャージ姿は悪目立ちしすぎだ

母さんが病院に着き、僕と兄さんは私服を受け取り着替えをすませた
そして、かのんちゃんのお母さんも、病院へ到着した
僕は見た事を見たまま、かのんちゃんのお母さんに伝える
養護の先生と、かのんちゃんの担任が何か相談をはじめたので、
僕は少し遠慮して、母さんと兄さんが座っている椅子の横に移動した

かのんちゃんのお母さん達の話が一段落すると、
先生達は、母さんを呼び、また何か話をはじめたが、
事務的な話が終わったんだろう、先生達は学校へ戻った


その間、兄さんはただ、処置室の方をぼぅっと見つめているだけ


娘が怪我をして病院に運ばれたら、普通は、取り乱してしまう所だが、
カノンちゃんのお母さんは、とてもクールで、慌てたりしなかった
ただ淡々と事務処理をこなし、
かのんちゃんが処置室から出てきたときも、
駆け寄ったり、泣いたりなどしなかった
それどころか、僕たちの事を気遣って、飲み物を買ってくれたり
あのピアノのあるサロンの横の喫茶室で、軽食をとろうと誘ってくれた
今は、母さんといつものように、明るく会話をしている
それでも、母さんがいてくれて、取り乱さずにすんだ、とか、
僕や兄さんがいてくれて、本当に助かった、とか
クールなフリをしながらも、やっぱり、動揺しているんだろう。。。
同じ事を、何度も繰り返ししゃべり続けている
。。。当たり前、か

処置後、しばらく、オブザベーションルームにいたかのんちゃんは、
問題がなさそうだと判断されたんだろう
病室へと移されることになった

それにしても
全く兄さんらしくない
いくらかのんちゃんが目の前で倒れたからって、
こんなにまで、腑抜けてしまうなんて


そんな兄さんに、少し幻滅する自分がいる

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