よみもの~中等部編 6 ~canon 教室移動の時、階段をのぼる途中で目線をあげると、海堂君の姿があった 由香ちゃんは先に行ってるね、と、階段を駆け上がりながら、 海堂君の背中へ、歯切れのいい声をかける そして振り向く海堂君に、私はいつも通り少しだけ笑ってみせると、 海堂君は足を止めて、私がそこまで登ってくるのを待っていてくれた いつもの低い声で、ぽつり、とたずねる 「今日も練習あるのか?」 「うん...もうすぐだから...」 やっと作った表情。。。笑ってるつもり それすらもぼんやりとして、 自分がどんな顔をしてるのかよくわからない 海堂君は、そうか、と少しだけ笑って、また階段を上り始める 私は、海堂君より数歩遅れて足を運ぶ みんながみてる みんながなにかいってる どうして どうして私ばかり こんな事を言われなきゃいけないの? どうして 「あれ?兄さん...かのんちゃん」 どうして私の事、放っておいてくれないの? 「かのんちゃん、どうしたんですか?」 ぐにゃり、と、足下がぬかるんだ。。。 かのん 海堂君が私を呼ぶ声を聞いた気がする [*前へ][次へ#] [戻る] |