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よみもの~中等部編
9 ~canon

レッスン前に階段の踊り場で、海堂君にあった
テニス部は視聴覚教室でミーティングがあるらしい
海堂君だけじゃなくて、数人のテニス部員もちらちらと集まりだしていた

少しでも海堂君といる所を見られたくない。。。
そんな風に卑屈になっていた私は、
いつも通り、笑ってみせて、その場から立ち去ろうとした

だけど、その時、海堂君がびっくりする事を言い出した
「テスト勉強、一緒にするか?」
誰にもわからないくらいの声だったと思う
それでも、私は周りが気になった
「え?あの...え?」
海堂君もそんな私の様子に気付いたんだろう
少しでも視聴覚教室から。。。
他の部員達から離れるように、と、目で合図を送り、音楽室の方へと足をすすめる
そして、音楽室の前まで来ると、ぼそぼそと話しはじめた

「土曜日の部活が最後...あとは、テスト明けまで時間...あるから...」
ぷいっと明後日の方向を向いてしまった
「ハァ...」
よそに向いていた顔を、俯き加減に落とし、
小さく息をついて、海堂君は向き直った
「土曜日午後から...週末、うち、来るか?」
本当はとてもうれしかった
だけど。。。
試験明けはすぐに関西のコンクールで、ピアノから離れる事に不安を感じた
「ダメ...か?」
海堂君はその私の雰囲気を感じたのか、ちょっと困った顔になる

どうしようかと、一瞬迷った
本当は一緒にいたい
けど、今、自分にとって一番しなきゃいけない事は何か。。。
一番大事な事は何か。。。それは譲れない。。。
だから正直に伝えよう、と思った
「あの...ごめんね...
 コンクール近くて、ピアノから離れると...不安になるから...」
海堂君は、そうか、と、何の抑揚もなく、ぽつ、と、つぶやく
「でっ、でもっ...海堂君、家に来る?
 私、急にピアノ弾いたり、
 レッスン室に変な時間に籠っちゃうかもしれないけど...
 あの...それでもよければ...」
海堂君の顔を覗き込むように、遠慮がちに見ると、
ふわり、と笑ってくれた
「いいに決まってるだろ?」
よかった。。。
一緒にいる時間ができる。。。それもうれしかった
だけど、私の気持ち、わかってくれたのかな?って。。。
そのやさしさがうれしかった

海堂君と一緒にいられる
これでもっとがんばれる、また、がんばれる。。。なんて、甘ったれた事、考えた
もうっ、どこまで根性なしなのよ、私。。。


そして、お母さん同士でも、貸すだの借りるだのと、
いつも通りのトレードが成立して、
土曜の部活の後から、月曜日までお泊まりで勉強会をすることになった

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あきゅろす。
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