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よみもの~中等部編
7 ~hazue

5月の連休があけ、仮入部が本入部になった頃、
『僕たち』に関する噂話が飛び交うようになった

そして、制服が夏服に変わってすぐ、昼休みに呼び出された
違うクラスの、全然知らない女子。。。
「海堂君、アタシとつきあってくれない?」
唐突にそんなコトを言われた
「何で?」
「何でって...」
ふんっと鼻で笑って、髪の毛を指で梳く
かわいいとでも思っているのか?
何度も、何度も同じ仕草を繰り返す
下品以外の何物でもない
「そんなの決まってるでしょ?
 つきあって欲しいから、つきあって、って言ってるの」
「理由は?」
「『つきあって欲しい』が、理由」
「そんなの、理由にならないね」
ばかばかしい

「待ってよ!なんでダメなのよ!!」
踵を返した僕の腕を、掴む
触れられた場所が気持ち悪くて、乱暴にその腕を振り払った
「僕は君の事を知らないし、興味もない」
「他に好きな人でもいるの?」
「君には関係ない」
ふんと、鼻で笑って、まるで自分は何でも知っているんだ、という、
勝ち誇った様なその態度が癇に障る
「海堂君も報われないわよね?
 『あの人』、お兄さんのカノジョでしょ?」
「だったら何?」
「やっぱり!」
ニィッと笑うその顔が、酷く歪んでみえる
なんて。。。醜いんだろう
「そう言う君も、僕じゃなくて、兄さんの方がいいんだろ?」
そう言うと、相手はぐっと口を歪めた

やっぱりだ...

「僕じゃなくて、兄さんに直接言えば?つきあって、って」
このあまりにも低俗過ぎる会話に、吐き気がする
僕は、一刻も早くこの場から立ち去りたかった
「まぁ、相手にされるはずもないけどね」
「なっ!なによっ!?」
ますます顔が歪み、その醜い顔が滑稽にすら思えてくる
「君なんか、彼女の足下にも及ばない、って事だよ」
自分でも驚いた
こんな他人を見下すような態度を、
自分がとることができるなんて思ってもいなかった


それから何度も同じような事があった
誰も僕の事なんかみていない
アイツらの眼に映るのは『海堂薫の弟』だ
僕じゃない

特別な事なんか要らない
僕はただ。。。
僕の事を『海堂葉末』としてみてくれるだけでいい

かのんちゃんのように。。。

かのんちゃんのように?
ほんとうにそうなの?
本当は
僕が薫の弟だから?
だからやさしくしてくれるの?
好きって言ってくれるの?

君も、そうなの?

そんなはず、ないよね?

僕が好きなかのんちゃんは、そんな人じゃない

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