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よみもの~中等部編
12 ~canon

先生が音楽室から退室されて、とん、と楽譜を揃える
そして、椅子に座ったまま、くるん、と、身体を瑞希ちゃんへ向けた
「さて、瑞希ちゃん、お腹空かない?」
「はい、ちょっと...」
「私ね、サンドイッチ持ってきてるの、食べようか?」
「でも...」
「ホントは音楽室でご飯食べるのはダメなんだけど、
 私も優先輩も...たまに先生も一緒に食べるのよ、お昼ごはんとか、おやつ」
目をぱちくりしてる
「黙ってればわからないから、食べよ?」
「じゃあ、いただきます」
素直でかわいい...なんか、はずえクンみたいな素直さ

サンドイッチを食べて、落ち着いた所で、練習を始める
「瑞希ちゃん、練習しない?」
「私は...カノン先輩の練習みたいです」
「そんな参考になるものじゃないんだけど?」

ショパンのエチュード1番を、軽く流すと、瑞希ちゃんはうわぁ。。。と、声を漏らした
「それは?」
「7月の関西のコンクールの課題曲...ショパンのエチュードから一曲
 これはもう1年半以上弾いてるし、前のコンクールとプレコンでも弾いたから...」
「すごいですね」
「だから、その分、自由曲を頑張っちゃおうかと思って」
楽譜に目が釘付け。。。の、瑞希ちゃんに、どうぞ、と、ソナタの楽譜を渡す
「それで、ベートーベンの3番...ですか...すごい...」
ぺら、ぺら、と楽譜をめくりながら、溜め息を漏らす
「だけど、選曲ミスった...」
「どうしてですか?」
「コレね、長いし体力使うのよ...途中でバテそう」
そう言うと、ページ数を数えてるし。。。
ちなみに、10ページなのよ、一楽章は。。。ながっ
「道化は?」
「道化は九州地区のコンクール...7月末...あそこは自由曲のみだから
 今までのコンクールの曲の使い回しでいいや、って思って...
 優先輩のドビュッシーはすごくステキなのよ?溜め息が出ちゃう
 あ、れ?桃城君?」
すこしだけドアが開き、桃城君が顔をのぞかせる
「自主練?入ってもいいかな?お客さんもいるけど」
あれぇ。。。
「真田さん?」


「弦一郎、知り合いか?」
「ああ、手塚の所へ年始の挨拶に行った際に」
わぁ。。。なんか日本人形みたいにキレイな人〜
凛々しい真田さんと並んだら、お内裏様とお雛様
。。。と、みとれていたら、
「ねっ、キミ、海堂のカノジョでしょ?」
なんかヒジョーに空気読めない人が。。。
さんざんまわりから『空気読めない』って言われてる私がそう思うんだから、
かなりのモン。。。よね
でも、イヤミがなくて楽しそうな人
「赤也、失礼だぞ」
「へへっ、すみません、柳先輩
 ゴメンねっ?
 でも、U-17の合宿所で、海堂がスッゲェ自慢してたんだよ?キミの事」
「まさかっ、それって、ありえないでしょう?」
アカヤ君。。。ね。。。いかにも『中学男子』ってカンジ、オモシロイ人だな〜

「カノンちゃん、この子は?」
「桃城君...4月から青学の生徒、私のはじめての後輩なの
 私の前にレッスンだったの、ね、瑞希ちゃん」
瑞希ちゃんは、もじもじしながらも、桃城君へ、こんにちは、と挨拶をする
うん、こういうのを『初々しい』っていうんだよね
私にその初々しさってあったかな?ずうずうしさならあったかも、ははっ
「私のレッスンの見学してて、今になっちゃって...」
「へぇ!カノンちゃんの後輩か〜
 そんじゃ、キミも、すっごくピアノ上手いんだろ?」
桃城君は、いつもの調子で瑞希ちゃんに笑いかける
瑞希ちゃんは、さらにもじもじもじ。。。かわい〜っ♪

「カノンちゃん、この後どうすんの?」
桃城君はアーモンドのような形のくりくりした目で問いかける
ホント、由香ちゃんがいうとおり、さわやかだよね〜
それにくらべて私は。。。
「あ...うん...ちょっと用事」
うじうじハッキリしない。。。
今日は穂摘ママに借りられてる日
「そっか、じゃ、俺らも立海大との交流会の途中だから...またな」
「うん」

桃城君は、じゃ!と手を上げて、音楽室を去ろうとした時、
キレイな人が、ゆっくりと頭を巡らせる
「桃城、俺は弦一郎とここで彼女のピアノを聴きたいと思うが?」
「え?俺はかまわないっスけど...」
と、私に目で合図を送ると、キレイな人は更にきれいな笑顔を私に向けた
「いいですよ?」
その言葉に、ふわり、と花のような微笑
思わず、溜め息がでそうだった、けど
「あ、俺も聴きたい、いいかな?」
うわぁ、ほんと、この人、にっこにっこ笑いながら遠慮もない
もうここまでくると、ずうずうしいとか、通り越しちゃって、逆に気持ちがいい

「赤也は交流会に行かんか!お前は部長だろう、しっかりせんかっ、たわけがっ!!」
真田さんの大きくは無いけど、刺さるような鋭い声のトーンにびっくりする
「自分らばっかり、ずるいっスよ〜」
それにも、へら〜っとしていられるって、実はスゴかったりするのかも〜

はぁ〜。。。それにしても、この人部長?
どこかのだれかさんとは、大違い
こういう人が部長だと、部活の雰囲気も明るかったりするのかなー?

ふふっ、この人、子犬っぽい

「じゃあ、短めの曲で」


子犬のワルツのアカヤ君は、あっちこっち省略して弾いたワルツに満足したのか、
にこにこと上機嫌で交流会に戻っていった

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あきゅろす。
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