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よみもの~中等部編
14 ~kaoru

この時間になると、もう食事になるようなパンはほとんどなく、
俺達は、小さなデニッシュと、紅茶をオーダーした

以前来た時にはなかった、屋根も、周りもガラス。。。いや、アクリルかな。。。
テラス席はアクリル板でキレイに囲われたサンルームになっていた
この前と同じ席に俺達は座る
「へぇ〜...冬仕様になってんだな?」
俺の軽口に、ふにゃっと笑う

小さな丸テーブル
前に来た時は向かい合って座ったな?
それなのに今日は、わざと顔の見えない位置。。。
俺のすぐ横にかのんは座り、決して顔を向けない
だけど。。。
「お前、イチゴの方が良かったか?」
「え?」
どうやら俺の作戦は成功したようだ
間抜けな事を言えば、絶対顔を上げると思った。。。
「ちらちらと俺が食べるの見てるから、お前食べたかったんじゃないかって」
「やだっ、私そんな物欲しそうにしてた?」
あわてながらも、俺から目線を外さない
「うん、してた...
 食べ物の恨みは恐ろしいって言うからな
 特にお前の場合はそうだろ?
 だから、気になっちまうだろうが」
「もぅっ、私ってホント、どんな人間よ?
 それでも...」
そう言って口籠り、スっと、目線を落とした
お前が辛くなるなら、言わなくていい
「そうだな...
 よく食うし、ボケてるくせに、計算高い所があるし...英語は赤点ギリギリで」
「それは私の人格とは別問題っ」
「いつもはずかずかと遠慮のないくせに、ヘンな所でビビる
 その上、意地っ張りで、俺の言う事なんかひとっつも聞きゃしねぇ...」
でもな。。。俺には言いたい事がたくさんあるんだよ。。。
「俺がどれだけお前が好きだ、って言っても、お前は信じてくれねぇ
 ...俺はそんなに頼りないか?」
それを言ってしまうと、お前が辛くなるってわかってる。。。
けど。。。
俺は

「...海堂君...もう...そろそろ帰ろうか?
 海堂君、お家に着くのが遅くなるよ?」

震える手で食器を片付けるかのん
この前。。。
バレンタインの視聴覚教室の時と同じ、何故そうやって逃げる?
それでも。。。泣かれるのはいやだった
部室でのかのん
あの泣き声が俺の耳から離れない
あんな、引き裂かれるような、そんな痛みを伴う声
堪らない。。。
結局俺も、意気地がない。。。ただの臆病者だ

だから、気付かないふりをする

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