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よみもの~中等部編
13 ~kaoru

改札を抜け、かのんの歩く足が止まった
「...何で?」
ぽつ、と、つぶやく
「うん...お前ん家の近くのパン屋...
 旨かったから食べようと思って、お前と」
かのんは丸い目を俺に向けた
とっさにでたセリフの割に、俺にしちゃ気が利いた事、言えてるじゃないか
「実は、昼も、ほとんど食べてねぇし、すっげぇ、ハラへっててな...
 何か食いてぇ、って思ったら真っ先にあのパン屋が浮かんで、
 気がついたら電車に乗ってた」
「嘘つき」
「お前もだろ?」
本当はいつも傷ついていたくせに、平気なフリして、
なんでもない、と言うお前の方がよっぽど『嘘つき』じゃないか
「海堂君の...嘘つきっ」
わかってる。。。俺の為に嘘を突き通すしかなかったんだろ?
「でも、お前...ハラへってねぇか?
 お前もほとんど食ってなかっただろ?」
「う...ん、私も、お腹空いた、かな?」
へへっ、と笑う顔に、小さな涙がぽろっとこぼれる
ぐしっと指で拭ってやると、かのんはぎゅっと顔をしかめて、
震える溜め息をつく

「あのパン屋、連れてってくれるか?」
「...うん」
無理して笑うかのん
泣きたいのに、泣けないお前
それは。。。俺のせいなんだよな。。。
俺が。。。お前をこんなに辛くさせる
強がり、もっと自分を追い込むお前。。。それは、俺のせいだ。。。

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