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よみもの~中等部編
13~kaoru

片付けをすませた俺がリビングに戻っても、かのんは全く俺に気付かない
それだけ、ピアノに集中している
先程置いたジュースも、手つかずのまま、そこにある
俺はゆっくりと、ソファに腰かけ、ピアノを弾くかのんをみていた
たまに、鼻歌も混じってすごく楽しそうで、みてて飽きない
以前、かのんは俺達がテニスをしているのを観るのが好きだとか、
楽しいとか言っていたが、こういう気持ちなんだろうか?

派手なアクションで、バーン!と音が響き、かのんの腕が大きく上がった
「ふわぁ〜〜〜っ」
そう言って、くすくす笑う
もういいかな。。。声を掛けても?

「お前、ホントすげぇな?今弾いてたの、新しい曲か?」
余韻に浸っているらしいかのんの後ろから、手を伸ばし、楽譜を覗く
「うわぁ〜、びっくりしたぁ」
はは。。。コレも俺には音符で真っ黒に見える
こんなの、よく解読できるもんだ、と、楽譜をめくりながら感心してしまう
「のど乾いてねぇか?それとも、ハラ減ったか?何か食うか?」
かのんはまだ状況把握ができていない、という様子
今日は頭の中身がどうやらちゃんと整理されてないらしい、おーい、戻ってこーいっ
「2時間近くお前ブッ通しで弾いてんだぞ?」
「え?そう??あ、まだ帰って来てないの?」
きょろきょろと部屋を見渡す
「うん」
「シーツ...」
「もう乾いた」
とっくの昔に、な
「は?」
「乾燥機にぶち込んで、大方乾かして、アイロンかけた」
「はぁ?」
「どうした?」
お、らしくなってきたじゃないか。。。
ぽかんと空いた口に、まんまるな目
「あの、海堂君って...意外...」
「はぁ?」
また、明後日の方向に思考が向いているらしい
「家事...するの...」
「洗濯やアイロンくらい、おまえだってするだろ?」
「もしかして、制服とかも自分で...アイロン?」
「当たり前だろ?」
何言ってんだか。。。

「...ったっ...」
体勢を変えようとしたかのんの顔が歪む
「痛むのか?」
「...う...ん...ね...私、歩き方、ヘンじゃない?」
俯き加減だが、それでも、目がおどおどとしているのがわかった
「なんで?」
そんなに痛いものなのかと、俺はまた胸が痛んだ
「なんか...なんか...まだなんか、はさまってる...みたい...」
そうか。。。はさまってるのか。。。
。。。。。挟まってる?
。。。!?
「へん?」
「あ...歩いてみろよ」
俺はとっさにそう言ってしまったが、よく考えると、かなりマヌケなセリフだ
「あぁあぁあぁぁあとでヘンだったら教えてっ」
真っ赤になりながら、そうやってあわてるかのん
なんかそういうのが、すごくお前らしいと思うんだが。。。
あれ。。。明後日の方向を向いて、口を尖らせてる
「どうした?」
顔をあげ、ふにゃっと笑う
「なんでもなーい」
「何だ?」
ホラ、またなんか面白い事、考えてんだろ、そんな顔だ
「うん...好きだなぁって...」
そう言って、楽譜に頭をこすりつける
「何が?」
「イロイロ」
「俺も、好きだぞ?さっきの曲、結構いいな?」
「うん」
でも、そう言って笑う『イロイロ』なお前の事が、『好きだなぁ』って思うぞ、俺は

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あきゅろす。
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