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よみもの~中等部編
5 ~canon

男子テニス部。。。
「海堂君、おめでとう...で、いいのかな?」
「何が?」
「部長なんだってね?」
「あ...あぁ...」
なんで、教えてくれないのかな?って思ってたけど
海堂君のこの態度をみてすぐにわかった
「自信...ない?」
あの手塚先輩の後に部長を勤めるって
やっぱりプレッシャー。。。あるよね
「俺に、部長なんて...勤まるはずねぇ...」
「どうして?」
自信があるとか、ないとか、そんなレベルじゃないのはわかる気がする
私だって、優先輩の代わりをしろ、何て言われたら、プレッシャーでつぶれちゃう
それに、海堂君は、手塚先輩の代わりじゃない
手塚先輩の『後を継ぐ者』だ
「最初からね、みんな完璧じゃない
 きっと手塚先輩...あ、どうかな?手塚先輩は別として...ふふ...
 あの人は別よね、うん、でも、最初から自信のある人なんて、いないと思うよ?
 ねぇ...海堂君、前に私にいった事、おぼえてる?」
海堂君の顔を自分の真正面に据える
「『まわりの要求が高いってことは、それだけお前がやれるって信じてるからだろ?
  諦めるなよ、ソイツら、みかえしてやれよ』って、ね?言ったよ?」
静かな海堂君の口調。。。でも本当に心にズンって来たんだよ?あの時
「初めっから完璧な人、いないよ...
 だから、探りながら、自分に足りないトコ、出来ない事は
 他の人に助けてもらったら...いいんじゃない?
 それって、恥ずかしい事じゃないと思う」
海堂君が私の肩を抱き寄せた
正面の。。。真っ黒なテレビの画面に映る私達。。。海堂君の顔が。。。
「俺、やっぱり無理だ...」
苦しそうに歪む。。。
私には、海堂君の背中をさすってあげる事しかできない
手塚先輩は完璧だった。。。たぶん、完璧すぎたんだと思う
部の事を知らない私だって、そう感じるんだから。。。
実際に、近くでその姿を見て来た海堂君には、
手塚先輩の凄さは、圧倒的だったはず。。。
私は。。。海堂君を助けてあげるだけの、力も言葉も、持っていない

「助けて、って、ね、言うの難しいよね?
 でも、言わなきゃわかんないよ?
 言葉に出さなきゃダメって、海堂君も言ったよね?」
ごめんね、私にはこれが精一杯なの
「...らしくないぞ、海堂薫っ!」
力を込めて、バシッ!と、背中を叩いた
指がピリピリする
「...って!!お前なぁ...」
「気合い、入ったかな?」
「痛ぇよ、バカ」
むぅっと唇を突き出して。上目遣いに睨む
「うん、その方が海堂薫らしいぞぉ!
 頑張れ!海堂部長っ
 愚痴だけなら、いくらでもきいてあげる、『愚痴だけ』ね?
 だって、物理的には無理ぃ、あ、私って役立たずだぁ〜、あははっ」
海堂君が『らしくない』んじゃない
がんばってる海堂君を支えてあげる力が。。。私には。。。ないだけ
その動揺を悟られたく無くて、わざと、こうやってふざけてしまう自分が情けない

急にぐいっと抱きしめられた
細いけど、力強い腕。。。その腕が。。。海堂君が、少しだけ震えている
「どうしたの?」
「俺...」
「もしかして、殴っていい場面かな?」
こんなときでも、ふざけた事しか言えない私
そうやって、自分の気持ちを、恐怖を。。。ごまかす

でも、違う、海堂君は。。。

「お前...抱いても...いいか?」

海堂君は本気だ。。。

「ごめん...俺...」

海堂君。。。もう、なにもかもが。。。いっぱいいっぱいなんだね。。。

こんなに怯える海堂君、初めて見た
海堂君はいつも。。。なんでも。。。自分だけ我慢してばかり。。。だ
腕の力を緩め、離れようと。。。あきらめようとする海堂君。。。
いつも私は、そんな海堂君に甘えてばかり

でも。。。今は。。。
いつも海堂君がそうしてくれるように
私も、海堂君の事を抱きしめてあげたいと、その気持ちでいっぱいになる

「...いいのか?」

ぎゅっと、抱きしめる事くらいしか。。。
私には残ってないから。。。

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あきゅろす。
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