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よみもの~中等部編
8 ~takeshi

自転車を押しながら、ユカちゃんの家まで送っていく
家は学校からそう遠くはない
徒歩だと、ボチボチ歩いて30分
いつもはバス通学だけど、歩けない距離でもない
自転車の後ろに乗せて帰ればもっと早いけど
折角二人でハナシをする時間がもったいない

「部長...」
「ん?」
「部長、海堂が部長だ」
「そっか」
さして驚いた風でもない
「さっきのミーティング」
「じゃ、桃城君は副部長?」
フイっと顔を上げて俺の顔を覗き込む
ユカちゃんはカノンちゃんと違って、ちょっと小柄
俺より頭一個分小さいから、どうしてもこのポジションになるのはわかるけど
やっぱり、こんな風に覗き込まれると、ドキッとしてしまう
「何でわかるんだよ?」
「女の子達でそんな予測してたから」
ああ、ナルホド。。。
「ハァ、お前ら、すげえな?」
「そりゃ、ね、テニス部フリークをなめちゃいけない
 でも、予測は桃城君が部長で、海堂君が副部長だったんだけどね」
「そうか?」
「そりゃ、そうでしょ?
 誰がどう見ても、ソレが妥当じゃないの?」
そういうユカちゃんは、きっとそうは思ってないよな?
「...海堂のヤツ、自分じゃ無理だって、俺の方が部長にふさわしいって言ったんだ
 けど、引退する3年生全員の意思だってよ」
「あれ?イジけてる?」
ちょっと意地の悪そうな笑い方
「ソンなんじゃねぇ...
 ただ、先輩達もよ、海堂が変わった事気付いてたんだなぁ...って思うと...
 ちょっと、な」
「やっぱりイジけてるんじゃない」
あははは、と、からかうように笑う
「違うって...
 アイツ、あんなだから、誤解されやすいけどな
 ホントは、すっげぇ真面目で友達とか、仲間おもいで、いいヤツなんだぜ?
 だから、先輩達がちゃんとわかってくれていた事がなんか、うれしくて、な」
何必死になって言い訳してんだか、俺。。。
「ふぅん...」
「何か俺の事バカにしてねぇ?」
「そんなことないよ、桃城君も友達おもいなんだね?」
「友達っつぅか、まあ、なんだ...ライバルだしな、海堂は」
「だから、友達以上?」
「そうだ...な...」
海堂は。。。友達とも違う
ライバル、まあそうだけど。。。それだけじゃない
なんだろうな、俺にとってアイツも『特別』ってコトなのかもな。。。

その後は、他愛もない会話が続く
テレビ番組や、アイドルのハナシ
そうそう、ユカちゃんは、不二先輩の大ファンなんだよな
去年のバレンタインのハナシで盛り上がる
「...ということなのよっ!
 なんかカノンってずるいよねーーーー
 ボケてるくせに、オイシイ所は、ちゃーーーーんともってくのっ!」
なんだよそのカノンちゃんの『激辛ペースト入りチョコ』って!?
不二先輩、マジ、凡人とは違うしっ

「よし、じゃあ...
 友達おもいの、桃城君には、特別にバレンタインのチョコをあげよう!」
ぽこっと、俺の脇腹にパンチを食らわす
「あれ?くれるつもりなかったわけ?」
「なんで?あ、友チョコ?」
「傷つくなぁ、傷つくぜ...俺、愛の告白ってのも、したのによぉ?」
わざと拗ねてみせるが、それこそ『ミエミエ』だ
「傷ついてないくせに、でも私、そういう桃城君も好きだよ?」
「俺も、そういうユカちゃんが好きだぜ?」
「でしょ?私達、最強の友達だよ?」
そう言って、また俺の脇腹にパンチを入れる
「特別の友達、じゃなかったか?」
「んっ、特別で、最強、だっ」
「海堂達にゃ、負けてらんねぇな?」
俺は拳をユカちゃんに突き出す
「そう?私は、カノンに勝てる気はしないけどね?」
でも俺の意図とは別に、その拳をペチペチと叩く
「何だよ、ソレぇ〜」
「だって、あの天然ボケというか、バカと言うか、
 ノーミソ無しのカノンとまともにやり合って、勝てるはずないもん」
「ひっでぇ友達だな?オイ...」
なんつぅ言い草だよ、まったく。。。でも
「これもね、愛情っ
 それでも、私はカノンの事がだーーーーーーーーーーーーい好きだから、いいの」
二人でゲラゲラ笑いながら歩く
なんだかんだ言って、ユカちゃんはカノンちゃんのコトが好きなんだなぁ
女同士の友情ってのがどんなモンかよくわかんねぇけどな、
ユカちゃん達って端から見てても、カンジいいよな
こう『女子』してないっつうかさぁ。。。

「送ってくれてありがとね!」
「いつでも送ってってやるよ」
「キミは部活頑張りなっ!」
「おう」
俺はユカちゃんが家に入るまで、門口で見送る
くるっと振り向いて、拳を突き出すユカちゃん
「がんばれ!桃城副部長!!」
「おう!!」
差し出された拳には届かないけど、俺だって、精一杯腕をのばす
いつかごつん!と、拳が合う日が来るといいな、と思いながら。。。

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