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よみもの~中等部編
7 ~takeshi

部活が終わり、メールを送る

To;もう帰っちゃったかな?

 Re;2年7組にいる。
    待っててあげてるんだから、さっさと着替えて来てよねっ

その返信に、俺は大慌てで着替えて、部室を飛び出した


冷たい空気の中、コートを身体に巻き付けて、椅子の上で小さく丸まって本を読んでいる
「寒かったろ...待っててくれてサンキューなっ」
「ま、ね...さっきの...」
そう言うと、丸まった身体をのばし、椅子に座り直す
「うん?」
「ビックリしたね?」
ふーっと、細く長い息を漏らした
「そうか?」
「あれ、桃城君、驚かないの?」
「あ...まぁ、驚いたっつぅより、やっと、って感じだな俺にとっては」
「やっと...ねぇ...」
小首を傾げ、髪の毛をぱさっと手で弾く
「まあな、海堂はああいうヤツだけど、な
 カノンちゃんの事、好きで好きでたまんねぇ〜〜〜、って、ミエミエだからよ?」
「そう?そりゃあ、海堂君がカノンを好きだってのは、わかるけどさ
 そんな、ミエミエ、って程でもないんじゃない?」
「そうかぁ?...結構前からだぜ?...一年の...丁度今頃、かな?」
「うそっ!?そんなに前から?」
「おぅ、気が付かなかったか?」
「へぇ...そっか...そうだったんだぁ...」
ユカちゃんはそう言うと、少しだけ笑ったように見えた

「ま、俺にしてみりゃ、海堂よりも、さっきのカノンちゃんに、びっくりしたぜ」
「そうだね、私も...あんなカノンはじめて」
くすっと笑って、髪の毛を指先でくるくるといじる
「ホントに...好きなんだろうな?海堂の事...」
「...ぅん...ね、知ってる?」
「あ?」
「海堂君ってね、入学した頃は、女子の間では、
 おとなしくて、真面目な男子ってイメージだったのね
 だけど、夏休み明けに、急に、怖くなっちゃった
 急に背が高くなって、声も変わっちゃって
 なんかね、いっつも怒ってるみたいで、雰囲気が怖くてさ
 声でも掛けられようもんなら、みんな急速冷凍だったのよ?
 まあ今もあんまり変わんないけどっ」
「確かにっ、アイツ、こえぇよなっ」
「桃城君もそう思う?」
やっぱり、男子でも怖いのかぁ〜と、からからと笑う
「思う思う、いっつも不機嫌でよ、マジ、人生面白い事、ひとっつもなさそう、っていうか」
「確かにね...でも...カノンはね、その海堂君を全然怖がらなかったのよ?
 ちょっと信じらんないでしょ?ま、それが『カノン』なんだけど」
大笑いを始めたユカちゃんだってそうだろ?
修学旅行の時だって、全然平気そうだったじゃないか。。。
「あーーー...何かわかるな、ソレ
 カノンちゃんって、相手が誰でも、アノ調子、だもんな?
 それに、誰にでも好かれる独特の雰囲気があるっていうか...」
「あれ?よくみてんじゃん、カノンの事」
「だから...言ったろ?
 ずっと海堂とカノンちゃんのこと見てたって...」
フッと身体の力を抜く。。。そして、いつもカノンちゃんと一緒にいたユカちゃんのことも。。。

「海堂な...カノンちゃんの事では、本気で怒って、拗ねて...泣いてた」
「泣いてた?」
眉をしかめて聞き返す
「うん...俺の前でも...一度だけ...
 アイツ、ホントに、悩んで...いつも一人で傷ついて、泣いてた」
ユカちゃんはせわしなく瞬きをして、信じられないと言う顔
そりゃそうだ。。。あの海堂だぞ?
アイツが泣くなんて、天地がひっくり返ったってなさそうだもんな
「カノンちゃんと...ウワサ、あったろ?」
「うん...」
「アン時なんて、俺まで辛くなっちまったくらいだ」
「そっか...
 カノンも、ね、辛かったんだよ?
 何でもないフリしてたけど、ね、何度も泣いてた...」
ニッと笑って、あの!カノンがよ!?
と、冗談っぽく、あ、の!と、指で空を指し示しながら笑う
「海堂も、な...その時だ、泣いたの見たの...
 あの後、アイツら喧嘩して...」
「うん、知ってる、カノンにきいた
 嫌がらせはアレで、キレイサッパリとまっちゃったけどね
 でも、あの時が一番かわいそうだった...」
「うん、なんか、海堂だって一人でイライラしてて、
 八つ当たりされる俺の身にもなれってんだ、なぁ?」
あっらぁ〜、桃城クン、よく無事だったね?
まったくだ、と、俺もユカちゃんも、大笑いをする

「二人がどうやって仲直りしたのかはわかんねぇケドな、
 あれがあってから、変わったよ、海堂は
 相変わらず、鈍くて、不機嫌で何考えてるかわかんねぇヤツだけどよ
 それでも、なんつぅか...そうだな、なんか優しくなった」
「ふぅん...カノンもね、よくそう言うよ?
 海堂君は優しいとかナントカ...その時は信じられなかったけど
 修学旅行の時の海堂君とか...さっきのみたら、ね、納得しちゃった」
にっ、と、ちょっと気の強そうな顔で笑う。。。
「だろ?」
そっか。。。誰かに似てる、って思ってたけど。。。わかった
雰囲気が、杏に似てるんだ。。。
「帰るか?」
「うん...で?」
がったん、と、椅子を片付けると、ぴょんと、俺の前に飛び出す
「で?でって何だよ?」
「寒い中、こ〜んだけ待たせといて?
 なんかあったかいものの一つでも奢ろうって気には、なんないの?」
「ハァ?」
指を一本立てて、俺の鼻先を指し示す
「ん?」
「オッケー、俺今、お年玉で結構リッチだかんな、何がいい?」
「じゃ、缶ココア」
「あれ、謙虚じゃないか?」
「こういうのはね、ホントのデートのときに奮発しなさいって」
そう言ってけらけら笑う

こうやってハナシをしてると、つくづくと思う
ユカちゃんって、カノンちゃんとは正反対だ
カノンちゃんはほわんとしてるけど、ユカちゃんはハッキリ。。。
一歩間違えばキツいという印象になるかな。。。
でも、俺は好きかな、そう言うトコロ
それに、顔だって結構カワイイしな。。。
なんでカレシいないんだろう?
ま、俺にとっちゃその方が都合がいいけどな

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あきゅろす。
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