[携帯モード] [URL送信]

よみもの~中等部編
11 ~kaoru
正月二日

夕べはさすがに、全員が早く休み
俺は5時半には起き出し、いつものランニングに出た
かのんは俺が部屋から出ると、ひょっこりと顔をのぞかせて、
小さな声で、いってらっしゃい、と、笑って送り出してくれた


ランニングから帰ると、もう全員身支度を整え、それぞれに朝食をとっていた
母さん達は台所で、葉末と父さん達の弁当を詰めている

今日の予定は。。。
一応受験生の葉末は、塾の合宿
8時半から5時まで、みっちりと勉強をするらしい
受験生にとっては、今が一番の詰め込み時ってヤツだからな。。。
俺の時もそうだった
まあ、葉末は、そこまでしなくても、青学なんて余裕だろうけど
父さん達は『ゴルフ打ち初め』
母さん達は『買い物初め』
。。。と言う言葉があるかどうかは定かではない。。。が
デパートの初売りに出掛けるらしい
毎年、俺や葉末をお供に、あの人ごみにも屈せず、立ち向かう母さんの後ろ姿。。。
思い出すだけで、うんざりする
でも今年は違う、母さん達、女二人で行く
ありがとう、おばさん!!
おばさんのおかげで、今年は平和な正月が過ごせます

そして残された俺とかのんは、初詣にでかけることにした
もちろん、遠出なんかしない
近所の氏神様へ詣でるだけで十分だ
俺達二人で出掛ける事に、葉末はブツブツ文句をタレていたが、
かのんがこっそりと、葉末に耳打ちをすると、約束ですよ!と、うれしそうに叫ぶ
お?納得したようだ
いったい、どんな呪文を使ったんだ、お前は?

「薫、自分たちでお昼ご飯食べれるわね?」
「ああ」
「今日は初詣に行くんでしょ?
 奏音ちゃん、お着物だから、あまり無理させないであげてね」
「うん」
そうか。。。着物。。。
昨日の着物姿、ちょっとだけびっくりした

入浴をすませ、支度をしてリビングに降りると
かのんは着物に着替え、テーブルでココアを飲んでいた
それにしても。。。
やっぱり、着物を着ると雰囲気がぐっと変わる
それに、立ち居振る舞いも違って、
こういうところは、ナンダカンダ言っても、女の子なんだなぁ。。。と、思う
「どうしたの?」
「え?...別に...なんでもない」
みとれてた、なんて、口が裂けても言えない
「薫も早く食べちゃって?」
「いただきます...」
俺は、ドキドキしてしまって、目の前に用意された朝食に集中するフリ
「お父さん達は、葉末を送りながら、もう出掛けたのよ?
 お母さん達、9時には出るから、火の始末だけはちゃんとして出てちょうだいね」
「...開店って11時じゃなかったっけ?」
「早く行かないと、駐車場もないし、福袋なくなっちゃうでしょ?
 もう、いやぁね、毎年同じ事してるっていうのに...」
ごめんなさい、母さん。。。物忘れのヒドい、ダメな息子で

それから間もなく母さん達は、ばたばたと支度をし
どどどど、と、出掛けていった
「母さん達、楽しそうだな?」
「うん、よかった〜〜
 今年は海堂君のお母さんのおかげで、私、行かなくてすんで...」
俺は飲んでいたお茶を吹き出しそうになり、無理矢理飲込んで、むせてしまった
「どうしたの!?大丈夫?」
「いや、どこの家も一緒だな、って思って
 俺もさっき、同じ事を考えてたから」
かのんは、はぁ〜、と、目も口も丸くして
やっぱりそうなんだぁ、と、呆れたように笑った

かのんの小さな巾着袋から、ピコン、と音がした
ごめん、と、ごそごそとケイタイをとりだして、忙しそうに指を動かす
「なにしてんだ?」
「あ?うん、由香ちゃんからメール
 ついでだし、お友達に、あけましておめでとうのメール一斉送信してたの」
「へえ...」
「海堂君は送らないの?」
思いつきもしなかった
そういえば、おとといから全然ケイタイをチェックしてない
それに、忘れてた、充電器につなぎっぱなし。。。だ
「ねえ、何時にいく?」
「今からでも...行けるか?」
「うん、コート着てくるね」
俺も部屋に戻って、ケイタイをとりあげると、何通もメールが届いていた
一番最初が、不二先輩、うわ、日付が変わってすぐに送ってきてるし。。。
さらっと着信リストをみると、全てテニス関係
部活の先輩に桃城。。。
神尾に伊武、財前と日吉、なんだよ。。。切原まで。。。

上着と財布、そしてケイタイをもって降りると
かのんは、エンジの着物用のコートを羽織り、首にはふわふわの襟巻きを巻いて待っていた
「ちょっと、悪い...
 何かいっぱいメール来てて、先に返信してもいいか?」
「うん、急がないから」
そう言って、襟巻きをとった

大石先輩からのメールで、指が止まった
どうしよう、か。。。
かのんの方を見る。。。
やっぱり、行かないとマズいかな。。。でも。。。
そんな様子をすぐに察する
「何?」
「うん...なんか、テニス部で初詣と打ち初め...来ないかって...」
「何時から?」
「昼からだけど...」
「じゃあ...まだ一緒に近所の氏神様の所に行く時間あるよね...
 ささっとお参りすましちゃおう?
 海堂君、行ってきたらいいよ、私、留守番してるから」
「でも...」
いつもなら、何も考えずに、誘われれば出掛ける所だけど
今日は。。。そんな気にならない
せっかく二人でいられるのに。。。
そう考えて自分で驚いた
今まで、そんな風に考えた事がなかった
一緒にいたい、と思うことはあっても、
『二人っきり』ということに、こだわる事はなかったから
やっぱり。。。俺、なんかおかしくねぇか?

「ね、早く行こ?」
ふにゃっと笑って強請るかのんに煽られる
俺、ヘンだ。。。
「...お前も来るか?」
「は?」
「...だから、一緒に行くか...学校」
「え?ダメでしょ?私、部外者だよ?」
「かまわねぇ、それに、もしダメだったら...
 別に...俺が行かなければすむ事だし」
そうだ、別に強制じゃない、行かなければいい
「それこそダメでしょ?」
「けど...」
「じゃ、こうしよう、お参りには一緒に行くけど
 海堂君はその後、部活の人達と学校でテニスの打ち初め
 私は駅前で時間つぶしてる...ね?」
「でも...」
「そうしよ?ね?」
ふにゃっと笑う
「いいのか?」
「何で?いいに決まってるでしょ?
 だって、一緒に初詣、行けるんだもん、ね?」
なんだか申し訳なくて、
ちょっとくらいわがまま言ったってかまわないのに
お前っていつもこうだよな。。。
手がムズムズと動く。。。
ホントはここで、抱きしめたい。。。けど、着物が着崩れるのは、非情にマズい
理性と本能。。。今回はあっさりと理性の勝ち
俺は、ぽん、と、手をかのんの頭にのせた

俺は急いで、残りのメールに返信をする
「まだ時間、ゆっくりできるね?」
「それとも、このまま出掛けるか?
 ついでに、昼飯、早めにとってもいいし」
「うん、じゃあ、デートしよう、デート♪」
ふにゃふにゃと、冗談っぽく笑う
「散歩じゃなくて?デートか?」
「そ、デートしよっ♪」
俺はこんなかのんに、いつも心がほっくりとさせられる

[*前へ][次へ#]

15/20ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!