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よみもの~中等部編
7 ~kaoru

寒さにぞくっとして目をあけると
俺は毛布からはみ出して、床に転がっていた
そして横には、芋虫のように、毛布にくるまったかのん
コイツが毛布を独り占めしてるせいで、
俺には、お情け程度に毛布の端っこが、身体にかかっているだけ
おまけに、ホットカーペットは省エネ設定
操作をしない時間が長く続くと、自動的に電源が切れるようになっていて。。。
今現在、この床はハッキリ言って、むちゃくちゃ冷たくて、寒い
テレビは6作目のメインメニューが、延々と繰り返されている
寝てる間に、映画が終わってしまい、メインメニューに戻ったんだろう
。。。ということは、俺達は同時に寝潰れた。。。らしい
今回は、引き分けだな
俺は冷えきった身体をさすりながら、エアコンとホットカーペットのスイッチを入れ、テレビを消す
そして、トイレに立つついでに、台所で暖かいミルクでも飲もうと考えた

「....さぶっ....」
小さな声がきこえて、振り向くと、
ますます身体を縮めて芋虫のように丸まったかのんが、
もぞもぞと器用に毛布を身体に巻き込み密着させていく
ナルホド、こうやって俺から毛布を剥いだのか。。。
まだ寝てんのかな?
「起きてるのか?」
「.....」
。。。寝てるらしい
俺はここで、ちょっと意地悪な気持ちがわいた
意地悪、といっても、些細な事だ
夜中に毛布をとられた事の仕返し、コレくらいは、な。。。
俺は毛布の端を掴み、
「オイ、いつまで寝てんだ、起きろっ」
そう言って、一気に剥ぎとる
毛布とともに、かのんの身体がごろん、と転がり。。。

ゴツン

。。。あ、やりすぎた。。。

「〜〜..〜う...ぅん...イタ...
 さっ、寒いっ!?!?」
「起きたか?」
「かっ、海堂君っ!?」
かのんはまんまるに身体を抱えたまま、ヒョコリと顔だけ上げる
亀かお前は。。。
「おはよう」
たぶん、語尾は笑いで震えていたと思う
「ひどぉい...」
「よだれタラして寝てんじゃねぇぞ、コラ」
「ヨダレっ!?」
そう言って、あわてて口に袖をすりつける
やっぱり俺にはこんなお前の方がしっくりくる。。。ような気がする
なんてったって、お前は『青春学園男子テニス部レギュラー公認おもしろ系』だもんな
「ウソだ」
「ひどぉい...」
「ホラ、さっさと起きろ...なんかあったかいもん、飲むか?」
床に転がったまま、恨めしそうに見上げるかのんの顔が、ふにゃりと崩れた
「おはよう、海堂君」

二人で、寒い寒いと文句をタレながら
俺は下の階のバスルーム、かのんは、二階のパウダールームで顔を洗い
身なりを整えて、キッチンに降りた
まだ誰も起きてないようだ、6時前。。。か。。。
「ホットミルクでいいか?」
「うん」
俺はマグカップに二杯分の牛乳を、ミルクパンで沸かし、少しだけ砂糖を入れた
「あったか〜い、ちょっと甘くておいしい」
カップを両手で持ち、ちびちびとホットミルクをすするかのん
そんなお前をみてるだけで。。。
「あ、海堂君、家から持って来たジンジャークッキー食べよ?
 ミルクとよく合うよ?」
「あ...ああ、うん」
頭に浮かんだ、昨晩に起こった事らしき、ぼやけた図を振り払う
「このクッキー、またおじさんが買って来たのか?」
「そうなの、一度気に入っちゃうと、いっつもこう
 賞味期限とか全然考えずに、大量に買って来ちゃうんだから...」
「へぇ...でもコレ、ウマいよな」
「うん」
ふにゃっと笑うかのんをみるだけで。。。なんだ?
「あら、もう起きてるの?」
か。。。母さん。。。ヨカッタ。。。
俺、おかしい。。。ヘンだ。。。夕べからずっとこんな調子。。。
スキあらば、じゃないけど、なんかがこみ上げてきて、妙な気分になる

「どうしたの、薫...まだ寝ぼけてるの?」
「おはようございます」
「おはよう奏音ちゃん、夕べは何時に寝たの?」
「それが、ですね...いつの間にか寝てたんです...
 3時半くらいまでは覚えてるんですけど」
「若いってすごいわねぇ...」
「いえいえ、ホントはもっと寝てたはずなんですけど、
 海堂君にお布団剥がれちゃって、びっくりして目が覚めました」
にんまりと笑う
まったく、そんな顔で、俺に視線をくれなくてもいいだろ
母さんが誤解したらどうすんだ?
「穂摘さん、おはようございます...あら、薫君も奏音ちゃんも起きてたの?」
。。。って、おばさん〜〜〜〜っ。。。
「智子さん、おはようございます
 それがね、薫ったら、酷いのよ?
 寝てる奏音ちゃんのお布団を剥いで、起こしたんですって」
母さん。。。なんかそういう言い方って、俺がすごい悪者。。。っていうか、
一歩間違えたら、俺がコイツを襲ったように聞こえるじゃないか。。。

俺は頭を抱えて、テーブルの下に潜り込みたかった
穴があったら入りたい、まさにその心境で。。。
「あらぁ...それは勇気ある行動だわ...薫君、怪我しなかった?
 奏音ちゃんって寝起き悪くて、凶暴になるのよ」
って、何でおばさん、そんなに冷静なんっスかぁ〜〜〜!?
「おかあさぁん、それ、言い過ぎぃ」
オイ、目が据わってんぞ、お前。。。
「それにしたって...薫...本当に何もしてないの?」
心配そうに、というよりも、からかうように母さんが言う
「何も...ある訳ないだろっ」
多少後ろめたいが、こう言うしかない

「おばさまもお母さんも、心配してるの?それとも、期待?
 海堂君って、ホント、聖者か仙人、ってカンジ...
 私、そんなに魅力ないかなぁ?.」
「ないわよ、ないない、全然ないっ」
「お母さん、それも、言い過ぎ」
じっとり、と、横目で睨む
「そんなことないわよねぇ?奏音ちゃん、こんなにかわいいのに
 あぁ...何か違うイミで、薫の事が心配になっちゃいそうだわ」
「違うイミって何ですか、おばさまっ!?」
ぱぁっ!と、晴れた顔になる
百面相か?いや、どっちかっていうと、福笑い。。。かもしれない
「いやぁね、奏音ちゃんったら、そんなの私の口からは言えないわぁ〜」
「穂摘さんちがうわよ、薫君のせいじゃないのよ、うちの娘がコレじゃぁねぇ...」
朝のお茶を飲みながら、女三人、きゃっきゃとはしゃぐ
もしかして俺って、オモチャにされてんのか?そうなのか?
笑い飛ばしながらも、かのんは、ちらりと、はにかんだような表情を向けた

このままココにいても、オモチャにされるだけみたいだし、昨日の晩も走ってない
寝不足で体が重たいが。。。
「俺、ちょっと走ってくる」
「まあ、元気ねぇ、薫君」
「薫、その前に、お風呂のお湯張っていってくれないかしら?」
「あ、うん...」

支度をして玄関に向かうと、かのんがリビングから顔をだした
「海堂君、いってらっしゃい」
「おう!」

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あきゅろす。
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