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よみもの~中等部編
6 ~kaoru

もう暖房の効果がすっかりなくなった部屋で、映画を観続ける俺達
かのんは俺の足の間で身体をすっかり預けている
俺は、思い出したように時々、毛布ごと身体を包むように、かのんを抱きしめる

今この状況を冷静に分析してみると、かなり。。。ヤバい

それなのに、こんな考えが頭に浮かぶまで、俺は当たり前のように
かのんの身体を自分に密着させて『しっかりと』映画を観ていた
これが『慣れ』ってヤツなのか?
慣れもクソも、こんなの、今度で2回目だ
いや、音楽室での事が、カウントできるとすれば、3回目?
それにしたって。。。

「なあ...」
返事はない
「もし俺が...その...無理矢理...っていうか...
 あぁ...キレちまったら...」
腕の中で、もぞっと動く
「そんときは、俺の事、殴っていい...から...」
もぞもぞっと動いて、目を丸くして振り向き、俺を見上げる
「...海堂君が、そんなコト、するの?」
「お...俺だって、男だ...そんなん、わかるかよ...」
現に。。。ムズムズしてるんだけどな。。。まだ目立ってないだけで
男の生理をわかってないコイツ。。。
かのんは、はあ。。。と、目だけでなく、口まで丸く開く
「そ...っか...そうだ、男の子だよね...」
「今更、なんだよ?」
俺は男じゃなかったら何なんだよ!?
「改めて言われると...
 なんか...なんていうの?
 海堂君は大丈夫、みたいな、妙に安心しちゃってたから...」
マジで、お前のそのボケ加減に、呆れてしまうぞ、俺は。。。
「お前なぁ...男に向かって...それ、ぜんぜん褒め言葉になってない」
「え...別に褒めてないけど...」
ソレはツッコミなのか?ボケなのか??
。。。やっぱ『天然ボケ』ってヤツか。。。
「ごめん、重いね?」
身体を離そうとするかのんを、がっつりと抱きしめた
そうしようと思った訳じゃない。。。
つまり。。。コレは、本能に忠実な身体の反応。。。

「あのぉ...海堂君...今、殴っていい所?」

「う、えっ、ちがっ...だって、あったかいし...って...」
なんだそれ、すげえ言い訳
「重くない?」
理性と本能が頭ン中で音速で切り替わり中のアップアップな俺のコト、
ホントはお前、わかってるくせにトボケてるんじゃないだろうな?
「重くない...から」
そう俺が言ったときには、もうかのんは身体を俺に預けきっていた

俺ははだけた毛布を掛け直す
かのんは腕の中で、ごそっと身体の向きを変えると、
俺の身体に腕をまわし、ぴったりとくっつく
「うん、ホントにあったかいよねぇ...海堂君、体温高い」
オイ、コラ。。。ちがうぞ。。。それは。。。
この状態で、体温下がるヤツ、いるはずねぇだろ
コイツ、ホントに天然なのか、実はわざとなのか?
うっ。。。ヤバ。。。ヤバい、俺の下半身、ヤバいっ。。。
理性は100%残ってる。。。と思う
けど、コッチの方は充填30%、いや、40%。。。身体。。。の一部は、正直なんです。。。

俺はがばっ!っと、かのんの両肩を掴み、俺の身体から引き離した
「俺の事、殴れっ!!」
もう俺は、イロイロなトコロが臨界に達しそうだった
今なら、まだ取り返しがつく。。。と、思う。。。けど、どうだろう。。。
えらく弱気な俺、情けねぇ
「まだキレてないみたいだけど?」
そんな俺にいつものふにゃっとした顔を向ける
おぉ〜い。。。その顔がヤバいんだけど。。。ただいま50%を軽く超過
「いいから殴れ」
俺はそう言うしかなくて、来るべき衝撃に備えて、ぎゅっと目をつぶった
それなのに。。。

腹を押さえ、身体を折り曲げる俺。。。カッコわりぃ。。。

まさか拳が、腹に飛んでくるとは思わなかった
そりゃあ、大した力ではなかったけど、油断してた俺には結構キツい一発
普通は、平手で頬を、ぺちっ、くらいじゃないのか?
あ、いかん、コイツに『普通』を求めてはいけない
わかってるはずだろ、そんなコトは。。。やっぱ俺がマヌケなだけだ
それに、そんな『かわいらしいコト』されてみろ
それこそヤバいだろ〜ぉっ!?
「あ、ご...ごめんっ、痛かった?ごめん、ごめんね?」
「う...いい...助かった...」
ホントに助かった、さっきの衝撃で、多少なりと、ナリを潜めている

「言っただろ、俺だってオトコだぞ...煽んなよ
 やめられなくなっちまったら、どうすんだよ...」
「だから、殴ったらいいんでしょ?」
「お前...わざと、煽ってんな?」
「そんな事してないよ?煽るってなに?」
「だっ、だから、さっきみたいに、抱きついてきたり、とか」
「海堂君が先じゃん」
口を尖らせて、上目使いに睨む
「俺は、自分でわかってやってるからいいんだよ」
コレは明らかなウソ、だ
でも、かのんは不思議そうな顔をする
やっぱり。。。さっきの行動は。。。天然。。。らしい。。。

「それにしたって、普通は、平手で顔、だろ?」
「それは張り手、海堂君『殴れ』って言ったもん
 それに、顔に殴った跡がのこっちゃったら...それこそ、みっともないよ?」
まったく。。。天然なクセに、なんでこういう所だけは、計算高いんだお前は。。。
じいっと見下ろすと、困った顔になって、ごめんね?と言う
ああ、やめてくれ、その顔がヤバい。。。って
。。。さっきから、この繰り返しじゃないか。。。
ホントに、かなわねぇな。。。
フッと気が緩むと、急に寒気が走った
そりゃ、毛布もはいじまってりゃ。。。な
「なあ、さっきみたいにしても、いいか?」
かのんは答える代わりに、ふにゃっと笑って俺に身体を預けた

「映画、さっきのとこまで、戻すね?」
「おぅ」
「海堂君」
「うん?」
「あったかいねぇ」
「あったかいな」
「海堂君」
「ん?」
「あけましておめでとうございます」
「うん、おめでとう」
「今年も...」
「おぅ」
「よろしくおねがいします」「よろしくおねがいします」

今、俺にとって最高の幸せは
お前と一枚の毛布にくるまって、この暖かい気持ちを共有すること。。。
俺はお前を守ってやる、なんて、大それた事は言えないけど
せめて、俺がお前を傷つけないように
お前の事を大切にしてやりたいって
そう。。。思うよ
今年も、
この暖かさが続きますように

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