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よみもの~中等部編
5 ~kaoru
「映画、続き観ようか?」
そう言って、リモコンに伸ばす手を反射的に捕まえる
「あ...ごめん...」
これも、反射的に口をついて出た言葉
俺、なにやってんだよ、まったく。。。
握った手をどうしようか迷ってると
かのんは、ふぅ、と小さく息をつき、ふにゃっと笑った
「さっき...ね、言ったけど...」
「あ?」
そこで、やっと手を離すタイミングをみつけた
「わからない、って言ったけど、本当は...無理、なんかこわい...」
そう言って黙り込む
俺は辛抱強く次の言葉を待った

「私ね、その...生理、重いから...病院に行くでしょ...
 いろんな人たちをみるの...
 私みたいに、お母さんと一緒に相談に来てるコとか
 お腹の大きなお母さんとか、赤ちゃんが出来てうれしそうなご夫婦とか」
「うん」
「でもね、なかには...」
俺はコイツの言わんとする事をすぐに理解した、が、かのんは言葉をつなげる
「中には...赤ちゃんできて、困ってる人...いる」

かのんが抱いている感情は、羞恥心や、罪悪感じゃない
純粋な『恐怖』だ
それも、行為そのものにではなく、その後に背負うものに
今の俺には、かのんの不安をとりのぞいてやれるだけの度量なんてない
俺だって、目の前の。。。自分の事に精一杯だ
かのんを抱きたくないのか、と問われれば、もちろん
抱きたい。。。欲しい、と思う
でも、無理にまで抱いて、かのんの事を傷つけてまで?
身体の快感は得られるだろう
だが、それでいいのか?
多分、俺達は。。。まだその準備ができていないんだろう
ヤッてみたいのと、本当にヤルんじゃ。。。ちがう
確かに、桃城の言っていた通りだ
俺達にとっては、恥ずかしいとか、そういう理由じゃないけど

俺はやんわりとかのんの身体を包むように抱いた
腕の中で、身体がビクッとはねる
「何もしねぇ...俺、お前が嫌がる事、絶対にしない」
「ごめんね...」
「謝んなよ」
ハァ...と、震える息をつき、頭をぐい、と、俺の肩に押し付けた
「ごめんね...」
「謝る事じゃねぇだろ?」
俺はもう一度、そっと身体を包むように自分に引き寄せ、
かすかに震えるかのんを抱きしめた

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あきゅろす。
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