[携帯モード] [URL送信]

よみもの~中等部編
4 ~kaoru

「ねえ、エアコン...の、せいかな?なんだか喉が渇くね...」
そう言って、水を一口飲む
「エアコン、切るか?寒くねぇか?」
「私、部屋から上着とってくる
 あと...毛布も持って来ていいかな?」
「いいけど...」
「ホットカーペットの上に座って、お布団かけちゃえば
 コタツみたいにあったかいから大丈夫だよ?」
「じゃあ、切るけど、寒くなったら言えよ?」
「うん」
かのんが部屋を出て行ってすぐに、
コツコツと、小さくノックする音がきこえ、母さんが部屋を覗き込む
「まだ眠らないの?」
「あ...映画観てて...」
「お母さん達、もう休むから」
そう言って母さんは、ピンクとブルーのストライプ地にハート柄のついた、紙袋を俺に渡した
「何?」
母さんは、ふふ、と笑って、おやすみ、と部屋を出て行った

それから間をあけず、小さい声で海堂君、とドアの外で声がする
俺はドアを開け、かのんを部屋に入れた
「お母さん達、もう寝ちゃうんだってね?
 うちでのコト、ちゃんと学習したんだ、お父さん達も」
そう言って、くすくすと笑う
かのんは、ぺったん、と、ホットカーペットに座り、毛布を膝にかけた
「それ、なあに?」
俺の手にある紙袋を指差す
「あ、さっき母さんが来て...」

俺は中身をみて絶句した
もうホントに『絶句』。。。。。

「何?」
「えっ、あ...いっ、いや...なんでもない」
かのんは目をぱちくりさせて、ヘンなの、と言ってDVDを操作する
「海堂君も上、なにか着た方がいいんじゃない?寒くなる前に」
「...お...おぅ...」
俺はその紙袋をテーブルに放り投げて、フリースの上着を着込んだ

映画を観ていても落ち着かなくて。。。
紙袋の中身の事も、隣にちょこんと座るかのんの事も
気になってしょうがない
そんな落ち着きのない俺に気付いたのか、かのんはDVDを停止させた
「海堂君、なんかヘン...あれ何?みてもいい?」
バカ。。。俺、なんで目につくとこに紙袋おいてんだよ。。。
だが、アトノマツリ、とはこのコト
じぃっと俺の顔をみるかのん、逆らう事が出来ない俺
。。。ハァ。。。
仕方なく、紙袋を取り上げ、突きつけるように渡す
俺はちらりとアイツの顔を伺い見た
真正面からマトモに見る勇気は、ない

かのんは『ソレ』を袋から取り出して。。。
どうして笑う?
そこは驚く所じゃないのか?
もしくは、恥じらう、とか
「やだぁ、海堂君のお母さんって、お茶目さんなんだぁ...
 それに太っ腹っ、まるまる一箱だよ〜」
寝てる葉末の手前か、必死になって、声を抑えて笑う
「...ったく...何考えてんだよ、母さん...」
俺は情けない気持ちでいっぱいになる
こんなコトまで、母親にお膳立てしてもらう俺って、どんだけ、だよ。。。
「こんなの...使えるはず...できるはずねぇ...」
そう言う俺の言葉に、いっそう身をよじって、笑いを堪えるかのん
「違う、逆っ、これは牽制なの
 もし使ったら、あなたたちが『致した事』わかっちゃうわよ、って」
ついには、毛布に頭を突っ込んで笑いだした
「そ、そうか?」
毛布を被ったまま、かのんは身体を震わせながら笑っている
そんなに笑わなくても。。。と、ちょっと恨めしく思ってしまった

「ハァっ...だいたい...ちょっと考えてみて?
 海堂君と私が、今ココで、コレ使うような事態がおきるはずないじゃない?」
まだくすくすと笑っている
「え...そ、そうだな、うん、そう」
。。。言われれば、当たり前の事、だ
「だからね、朝になったら、私達には必要ありません、って返せばいいのよ」
「そうなのか?」
「だって、必要ないもん」
そうきっぱり言い切るかのんに、複雑な感情を覚える俺って一体。。。
そんな俺の気持ちが伝わったのか、ふにゃっと笑ってささやく
「それとも、使ってみたい?」
まっすぐ俺の顔をみるかのんから、目をそらすことができない
「え...わ...わから...ねぇ...」
正直な気持ちだった
「お...お前は...どう、なんだよ?」
「うん...私もわからない...」
わからない。。。よな。。。
そ。。。そりゃ、使ってみたくないといったら。。。
ウソ。。。になるけど。。。でも。。。
俺は黙り込んだまま、かのんの顔をみつめた
くすり、と笑って、その箱をまた紙袋にしまった
「映画、続き観ようか?」

[*前へ][次へ#]

5/20ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!