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よみもの~中等部編


俺はそっと部屋を出、さっきかのんに電話をしたエントランスの隅へ向かった
俺には、他のヤツらのように、アイツのことを自慢なんてできないし
その手のハナシには疎いし、興味もなかった

「ここにいたのか...」
桃城がゆっくりと近づき、俺の横にストン、と腰を下ろした
「怒ってんのか?」
「別に...ただ...
 ただ、ああいうハナシについていけねぇだけだ...」
桃城は、ふぅん...と言ったっきり、ケイタイをいじりだした
「お前...否定しねぇんだな?」
「あぁ?」
「カノンちゃんの事...否定、しねぇんだ、もう...」
桃城はケイタイをみつめながら、うっすらと笑っているように見える
「ハッキリさせろって言ってたのはオメェだろうが?」
ただ、俺は...認めただけだ、自分の事
「オメェ、変わったな?」
変わった?。。。そうかもしれない。。。自覚は、ある
「はーーーーーっ、チクショー
 悔しいよなぁ、オメェに先越されるなんてよ?」
にたぁ。。。と、笑うその顔で、想像はつく
いつものことだけど。。。
「バァカ、何もねぇよ」
「マジでか?」
どうしてそこで、急に真顔に戻る?
「何もねぇ」
全く何もねぇ。。。ってことはないけど。。。
コイツのイミする『先を越された』という事は。。。ない
「まさか...ヤリ方シラねぇ...ってこたぁ、ねぇよな?」
「バッ...バカにすんなっ
 それくらい...知ってる
 けど...そんな...コト、ありえねぇ...」

中学生だからまだ早いとか、そういうことじゃない
なんとなく、自分が『そういう事』をするのが想像できない
俺とかのんが?
なんかそれって、ありえねぇだろ?

でも。。。
あの時は。。。衝動に駆られた
そういう事をしようと思った訳ではなかったけど
というよりも、その先のコトなんて全然考えてなかった
それでも。。。ただ、抱きしめたかった。。。
アイツに、かのんに。。。触れたかった
自分でも準備をしていた、とか、期待していた、なんて事はない
現に、あの時、俺はアイツにそう言ったんだから。。。
それなのに。。。なんだったんだ、アレは?
だからって、俺は後悔してないし、罪悪感だって持っていない
あの日以来、ああいう接触はない
が、別にそれが物足りないわけでもない
どうしてもしたいとも思わない
それに、その先の事だって。。。
かのんだって、そんな素振りはみせない
。。。まてよ。。。本当はどうなんだ?
かのんは。。。それでいいのか?

「なぁ〜に想像してやがんだよ?」

。。。と、また、いつものぐるぐる思考に突入した俺に
桃城はすかさずツッコミに入った
こんなコト、訊いてもいいもんだろうか?
っていうか、こんなコト、話せるのって
結局、コイツだけ。。。って、俺、どんだけ友達少ねぇんだか。。。
「なあ...」
「なんだよ?」
「いや...いい、やっぱいい...」
やっぱ訊けねぇ、こんなこと。。。
「気になんだろ?何だよ、ハッキリしねぇヤツだな」
桃城は眉をしかめる
なんだかその顔が、俺の事を責めているような気がして。。。
「...やっぱ...して欲しいものなのか?」
「はぁ?」
「だから...言わせんな...」
はぁ?と、言ったままのマヌケ面を向ける桃城
いや、きっと、今俺の方がコイツより、何倍もアホ面をしているにちがいない
「どうかな?」
桃城は考え込んだ
「俺はお前らがどうなのかわかんねぇし
 女の子の気持ちなんて正直わかんねぇから、
 もし俺だったら、という前提で話す...から、笑うなよ?」
「笑わねぇよ...」
だって、こんなこと訊いてる俺が笑われたって仕方がないんだから
「俺だったら...そりゃ興味あるけど
 でも、ヤッてみたい、というのと、実際ヤるんじゃ違う、と思う
 だから、なんとなくそんな雰囲気になったときに、考える...と思う
 相手がある事だしな...
 それに...なんか、恥ずかしくねぇ?」
最後は、にひゃひゃっ、と笑った
けど、俺は笑えない
恥ずかしい?そういわれてみれば。。。恥ずかしい、よな
だって、普段他人に見せない所までさらす事になるんだし。。。
俺は急に顔がアツくなった
それ、絶対ありえねぇ、そんなんムリだ
「俺、なんかそういうの想像できねぇ」
そう言う俺に桃城は、きょとーんとした顔を向けた
「想像できねぇ?なんで? 
 普通は想像するもんじゃねぇのか?」
「そ...そうか?でも俺...」
と、想像してみようとするが、どうしても『その図』が浮かばない
ピアノを弾いてる姿とか、ふにゃっと笑う顔はすぐにでも頭に浮かぶのに。。。
「な?想像できたか?」
「...いや、できねぇ...」
それどころか、どっから想像したらいいのかすら、
わからないんだけど。。。
「お前、大丈夫か?」
呆れた、というよりも、真剣に困った顔の桃城
「大丈夫って...え...ヘンか?」
桃城はまたしばらく黙り込んで、ぽそっとつぶやいた
「きっと、お前らそう言う関係なんだろうな?
 男とか女とか...そういうんじゃねぇ...
 俺にはよくわからねぇケド、いいんじゃね?そういうのも」
ふぅっ、と、息をついて顔を向けた桃城は
いつものからかっているような顔ではなかった
「こういうことは、さ...
 なるようにしかならねぇからな?」
クククっ、と笑いもう一度、にたぁ、と『いつもの』あの顔
「それにしても、オメェとこんなハナシするなんて思わなかったな?
 ホント、変わったよ、お前」

そういうとまた桃城は自分のケイタイを弄りだした。。。 

*****
次頁あとがきです

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あきゅろす。
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