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よみもの~中等部編


部屋に戻ると、切原と日吉も自分のベッドに転がっていた
3人が3人、一言も口をきかず、自分のケイタイをいじっている光景は、
なんだか異様で気味が悪い
まあ、仲良しグループと言う訳ではないし、
仲良くしようなんて、そんな事を考えるようなヤツらでもないから、
お互い干渉し合わない方がウマくいくのかもしれないけど。。。

俺が自分のベッドに上がり込むと、財前がくるり、と顔を上げた
「カノジョ、どうやってん?」
その言葉に、冷え冷えとした雰囲気だった部屋の雰囲気が、
ピ!と、色めき立った
そしていち早く反応を返したのは...切原赤也...
「へへっ、コイツにカノジョぉ〜?マジかよ?
 ソイツ、相当モノ好きなんじゃねぇの?」
モノ好きで悪かったな。。。そう言われても仕方ない。。。けど。。。
それだって、コイツだけには言われたかねぇ
「オイ、海堂、写真とかねぇのかよ?」
なれなれしい
「ねぇよ、そんなモン」
「どうせ大した事ねぇんだろ?もったいぶらずに見せろよ」
そう言って、俺のケイタイを奪い取った
慣れた手つきでケイタイを操作する切原
勝手にすればいい、どうせ、アイツどころか、写真の一枚も保存されてねぇんだし

頭をめぐらせると財前も日吉も、俺のケイタイを覗き込んでいた
「チッ...マジで写真、一枚もねぇじゃん」
つまらなさそうに、でも、まだ何かをみつけようとひっきりなしに動く指から、
俺はケイタイを取り返した
「海堂、どんなヤツだよ?
 ま、どうせ『全国大会で優勝したから』って、ちやほやされてるだけだろーけどなっ」
ニカーーーーっと、笑い顔を向ける
今まで俺達にしてきた事、忘れてんじゃねぇかっていうくらい、
人懐っこい笑い方だ
「俺のカノジョはチョーかわいいしっ、見るか?」
お前にこそカノジョは似合わねぇだろ、コラ
別に興味はなかったが、ケイタイを目の前にずいっ、っと突きつけられ、
嫌でも画面が目に入った
上から撮ったんだろう、二人とも上目遣いで、
なんだか、ちょっと媚びたような笑い方
かのんには絶対ムリだ、こういうポーズ
。。。ってか似合わないよなアイツには
「なっ、なっ?かわいいだろー、うらやましいか?
 ホラ、お前らも見ろよ」
と、日吉や財前にも自慢をはじめる
「っちゅうかこれ、無理矢理撮ったってカンジなんやけど?
 なんや女の子、ビミョーに嫌がってへん?」
財前の鋭いツッコミに、切原はたじろいだ
あぁ、ナルホド。。。
自分こそ『立海レギュラー』のブランド使って、
好き勝手やってる、ってわけだな
「お前だって、いっつもケイタイいじってるじゃねぇか
 女だろ?写真みせてみろよ」
切原は、それ以上の追求を逃れようと必死だ
「別にええけど...
 コレが、ちかちゃん、こっちは、ゆきちゃん、これはくみちゃん...」
「って、どんだけいんだよお前?」
俺も同じ言葉が口から飛び出しそうになった
「ああ...よぅわからんけど、みんなメル友っちゅうヤツやな
 特定のカノジョはおらんし、女の子らもようその辺はわきまえとるしな」
そういうことを、感情の抑揚もなくしゃべる財前
なんだかよくわからないヤツだと思っていたけど、
さらにわからなくなって来たぞ。。。
「日吉はどうなんだよ?」
急に矛先を向けられて、焦る日吉
「...いない」
「ぅわっ、暗ぇ...コイツみてみろよ
 こーーーーーーんなコワい顔して、チョーーーーーーー暗ぇのに、いんだぞ?」
それは俺の事か、切原よ
そういうお前は
こーーーーーーんなアホ面さげて、チョーーーーーーー軽そうなくせに、いねぇんだろ?
「あれぇ、お前ら、結構仲良くやってんじゃん?」
うわっ、なんで桃城が部屋覗いてんだよ?
来るな、来んじゃねぇっ
「おっ、桃城、いいとこに来たじゃん
 コイツ、カノジョいんのか?」
人を指差すのはマナー違反だ、切原
「あぁ?カノンちゃんのことか」
さも『当たり前だろ?』という口調で答える桃城
「マジか?いんのか?
 でも写真も持ってねぇんだぞ?
 どんなコだよ?」
必死だな、切原
そんなに俺にカノジョがいちゃおかしいのか?
。。。おかしい。。。かもしんねぇけど。。。
「カノンちゃんの写真か?
 俺、持ってるぞ?あ、動画もあるけど観るか?」
「なっ!?」
今度は俺が動揺する番だった
動画って?いつそんなもん撮ったんだよ
ってか、なんでオメェが、そんなもん持ってんだよ?
「ケイタイとって来るからちょっと待ってろ」
と、桃城が自分の部屋にかえっていったのに
待ちきれない、という様子で、切原が桃城についていく

「早く見せろよ」
「あわてんな、って」
戻って来た桃城がケイタイを、ぱっと操作して、写真を出した
「ホラ、コッチのコ」
「なんだ...結構フツーじゃん...」
切原よ、なーんかひっかかるんだがな?その言い方。。。
かのんがフツーだと言いたいのか?
それとも、俺のカノジョがフツーなのがおかしいのか?
どっちだ!?

しかし、俺だって桃城がどんな写真をもっているのか気になる。。。
結局。。。部屋にいた俺達みんな。。。俺も含む全員。。。が、ケイタイを覗きこんだ

その写真は橘さんの妹と一緒に写っていた
二人ともまったくカメラを意識してない
ふにゃふにゃと笑って。。。かのんらしい顔だ
ストリートテニス場での、いつものおしゃべりの最中を、撮ったものだろう
「あーーーーーーーーっ!!!
 テメエっ、なんで杏ちゃんの写真なんか持ってんだよ!?」
。。。なんで神尾がここにいる?
「別にいいだろ?二人ともかわいかったんだから
 あとでお前にもこの写真転送してやるよ」
神尾はそれで納得したのか、してないのか。。。
でも、下手なコトを言って、写真が貰えない、なんてことになったら困るから、
黙ってるのかもしれない
「カノンちゃん...いいよな、自慢できるようなカノジョがいてさ...
 っていうか、この前は違うって言ってなかったっけ?
 ま、別にいいんだけど...それにしても普通は自慢なんかしないよね...
 でもまあ、わかるけどさ、その気持ちも...
 それにしても、もったいないよな...だいたいさ...」
伊武よ、何が言いたい?
文句や言いたい事があるんなら、ハッキリ言え
桃城のケイタイは、部屋にいるヤツらの手から手へ渡っていく
「ああ、先日の...」
って!なんで、柳生さんまで!?
「柳生先輩、知ってるんっスか?」
「ええ、切原君、以前お会いした事があるんですよ...
 少しお話もしましたが、なかなか、かわいらしい方でしたよ?」
切原は納得できないといった顔で、何かブツブツ言っている

それにしても。。。
。。。この部屋。。。何人、人間がいるんだよ

「あぁ〜ん、バンダナくんの、いっ、けっ、ずぅ〜うん
 こんな女といちゃいちゃしてるだなんてぇ〜ん、ゆるせないぃ〜んんんん」
げっ!?どっから湧いた!?
つぅか、ベタベタさわんなっ!!
「ウワキか?しなすど!」
俺は止めないから一気にやってくれ。。。

一巡してケイタイが桃城に戻ってきた
「海堂にもやるからな?...と、動画、動画...」
そう言って、何か操作をしだす
「桃城、何の動画だよ?まさか、隠し撮りか?杏ちゃんと一緒のヤツか?」
「んな悪趣味な事しねぇよ、ウチの文化祭でピアノ弾いたんだよ...」
いや、動画はちがうかもしれねぇけど、写真は明らかに隠し撮りじゃないのか。。。
「あれ、もしかして、兄貴の言ってたコのコトか?
 ピアノのうまいオモシロいコがいるって」
不二先輩、アンタ、何を弟に吹き込んでるんっスか?
その上、オモシロイって。。。まあ、面白いけど。。。
「そういえば、お会いした日、彼女のバッグには楽譜が入っていましたね
 レッスンの帰りだったのでしょうか?」
あの短い間で、そこまでチェックできるってスゴいっスね、柳生さん?
「へぇ...杏ちゃんからきいたけど、カノンちゃんってピアノ上手いんだろ?」
「ありゃ、上手いってもんじゃねぇぞ?
 マジ、すげえんだって...と、あった、あった」
薄い藤色のドレスの裾を揺らしながら、舞台を歩いている姿が映った
遠くから撮ったものだから、顔は見えないが
それでも、ピアノを前にした時のアイツの雰囲気がよく伝わってくる
「えぇと、なんだったっけかな...
 道化がナントカ...なんだっけな、海堂?」
「道化師の朝の歌」
「ああ、それだそれ」
そんくらい覚えとけ
演奏が始まると、誰一人として口を開かなかった
当然だ、アイツの演奏はいつもこうだ
「すばらしいですね、中学生でこれ程の演奏をされるとは...」
「ホント、すげぇ...な...
 それにしても、いつものカノンちゃんとは全然違うんだな
 ギャップ萌えってヤツか、海堂?」
神尾。。。なんだその『ギャップモエ』って?
「神尾、お前も知ってんのか?そのコのこと」
切原は、桃城のケイタイを奪って、今度は動画を観ながら神尾に尋ねる
「何度か、地区のストリートテニス場に連れて来てたからな」
「何か悔しくねぇ?
 コイツにこんなカノジョがいるって不公平だろ?」
だから、指差すな
不公平だと思うなら、分相応のカノジョでも作りやがれ
そういう俺も。。。か。。。?
「そんな事言ったら、財前だって沢山いるじゃないか
 それこそ、不公平だろ」
忘れていたが、日吉も一応、会話には入ってくる

そして。。。カオス
それぞれにカノジョ自慢や、自分の学校のかわいいコの自慢
みさかいなく、女子のハナシや。。。
男ばっかりが集まってるんだ。。。それなりに、下ネタも飛び出す始末
まさに、俺達のいる部屋は、混沌
ただの中学男子生の、むさい集まりと化した

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