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よみもの~中等部編
16 ~side kaoru

卒業した小学校
友達と寄り道した公園
青学に入学していなければ通っていただろう中学校
仲の良かった友達の家
なんでもない、小さな思い出すら、
今まで知らなかったコトを知るのは、楽しかった

「カノンちゃん?」
「あれ〜、や〜〜〜んっ、みきちゃん久しぶり〜〜〜」
二人で、きゃぁ〜とはしゃぐ
いつもの俺なら、女の騒ぐ声にいらつくのに
今朝はそんな姿も好ましくおもえる。。。
「みきちゃん、もしかしてテニス部なの?早いね、部活?」
「うん、そう、日曜日だっていうのに、ね
 でも一応レギュラーなんだよ、新人戦ももうすぐだしねっ」
「すごいねぇ」
その『みきちゃん』は、どうやら、俺の事が気になるらしい
「カノンちゃんのカレシ?」
ふにゃっ、と笑うかのんは、肯定も否定もしない
「すごい、かっこいいじゃんっ
 もしかして、年上?高校生とか?」
かっこいい。。。って
面と向かってそんな事を言われた経験がなかった俺は戸惑った
「ううん、同級生、学校のクラスメイト
 海堂君、小学校の時のクラスメイトの、みきちゃん」
俺はどう言っていいのかわからず、ただ会釈だけした
じぃっと俺から視線を外さない
「運動部でしょ?」
「あ...ああ...」
なんだ?
「テニス?」
「え...うん」
どうしてわかった?
「みきちゃん、なんでわかるの?」
「ただの当てずっぽう」
と、けらけら笑い出す
さすが、かのんの友達、なんかキャラ被ってるし
「へぇ、そうか、テニス部かぁ...あそこの男子テニスって有名だよね〜
 毎年、関東大会に出てるし、今年は全国大会優勝でしょ?
 来年は、カレシ君の時代だね〜、お互い部活、頑張ろうね!!」
ははは。。。と、笑うかのん
どうリアクションを返していいのかわからず、
ああ、うん、と言うしかない俺

かのんの友達が、じゃーねーーーー、と、元気に去っていった後
俺達は、顔を見合わせて笑った
「そっかーーーーーっ、海堂君、実は有名人だよね」
「お前だってそうだろ?」
「いえいえいえ、青学テニス部レギュラーの海堂薫クンほどではありませんよ」
「うるせぇよ」
またひとしきり笑ったあと、かのんはちょっとだけ俯いた
「ねぇ、海堂君は...」
「うん?」
「...うん...」
「何だよ?」
「海堂君、かっこいいよね〜、ホントだ、カッコいい」
「なんだそりゃ?」
「なんでもなーーいっ」
ふにゃふにゃと笑うかのん
でも、何だろう?
何でそんなに不安そうな顔をするんだろう?

「おい」
手を捕まえて、歩く足を止める
「ん?」
「お前は」
俺は大きく息を吸う
「お前は俺の事、レギュラーだから...その...」
最後までちゃんと言えなかった
でも、かのんは、眉をしかめる
「バカ」
「ば...バカって...」
「バカっ」
怒らせた?
ぷいっと顔をそらせて歩き出す

しばらくすると、半歩前を歩いていたかのんの肩が、ふるふると震えてるのがわかった
「ご...ごめんっ、俺、そんなつもり...」
「そんなつもりって何!?」
くるっと振り向き、キツい口調
「レギュラーの海堂薫じゃないっ!
 海堂君は、海堂君だから、特別なのっ
 レギュラーじゃなくてもっ、テニスをしてなくてもっ」
そして、また悲しそうな不安そうな顔
そんな顔。。。すんなよ。。。
「でも、海堂君は...」
「俺だって!
 ...俺だって、お前の事...お前だから...」
なんでいつもこう、俺のセリフって尻すぼみになるんだよ
ついイライラして、チッと、舌打ちをしてしまった
「なんで...」
「え?」
「なんで?
 私、海堂君にたくさんいろんなもの貰ってる、
 やさしくしてもらって、心配してもらって
 でも、私、海堂君には何もしてあげてないのに、なんで...」 
今まで、ずっとそうやって負い目を感じていたのか?
負い目?。。。ちがうな、俺だって。。。
「俺だって同じだ...」
「私...」
「そんなこと、ない...俺、いつもお前に勇気、とか、やる気貰ってる」
かのんはしばらく、きまり悪そうに、視線を泳がせていたが
「...ごめん...ね」
そう言って、俯く
「謝んな」
「うん」

それでも、
何がそんなにかのんを不安にさせているんだろう
俺は...いや、俺達は初めてお互いの気持ちを言葉にしたような気がする
いや、気がするんじゃない、初めて、だ
今までは、なんとなく、時間を共有していただけで
わかったつもりになってただけで、
実はかのんの事、全然わかってなかったんじゃないか
「なあ?」
こく、と頷くだけのかのん
ぽん、と頭に手をおく俺
「言わなきゃわからない事...って、あるだろ?」
不二先輩にずっと前に言われた言葉
「俺、こんなだから...
 言って欲しいんだ、その...お前のこと...」
もっと知りたいんだ
そう思うのは俺のエゴ。。。なんだろうか?

しばらくは、会話もなく歩く
でも、コイツが不安にならないように
いや、俺自身が不安を隠す為に
指を絡めて
ゆっくり歩いた

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あきゅろす。
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