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よみもの~中等部編
side kaoru 5

試合は、相手が棄権して終わってしまった
不完全燃焼、その言葉がぴったりだ
俺は、自分の限界点がまだみえない。。。

「ちょっと走ってきます...」
そう、乾先輩に言い残しコートを離れる
「よう、マムシよ、やるじゃねぇか
 とはいえ、体力バカのお前にしちゃ、かなりお疲れ気味ってか?」
減らず口を叩く桃城に、俺は利き腕に着けていた鉛の入っているリストバンドを放りつけた
うるせぇんだよ。。。

走りながら、俺は自分の気持ちを整理しようと努力する
この試合で自分の限界を試したかった
だけど、それよりも、俺が...自分のテニスに自信を持ちたかった
自分に自信をもてば、もっと強くなれる、そう思っていた
そうすれば。。。
俺は、躊躇する事なく、アイツの事を名前で呼ぶ勇気が持てるはずだと。。。
いや、呼ぼうと決めていたんだ
俺はまだ、自分に絶対の自信を持つ事が出来ずにいるようだ
『まだまだだね』。。。だ、な
つい、越前の口癖を思い出し自嘲する

会場のまわりを、一周し、コートに戻る途中
東屋にいる、アイツの姿をみつけた
近づく俺に、お疲れさま、と自分のハンカチを寄越す
アイツの横には、ボトルについていたんだろう水滴が、すっかりベンチに落ちたスポーツドリンクがあった
限界まではまだだと言っても、この暑さの中、長時間動いた俺は、さすがに喉がひりひりする程乾いていた
飲みかけではあるようだが、それ、もらってもいいか?と、ボトルを取り上げる
「それ、もう温くなってない?冷たいの、買ってこようか?」
「...あまり冷たいのは飲みにくい」
俺のまだ火照った体には、ちょうどいい冷たさが喉下へと流れる

俺はそのまま、その東屋で、ストレッチをする事にした
足、腕、肩、腰のまわり。。。少しずつ、全ての筋肉を牽きのばすように
そんな俺を、アイツは、じぃっとみつめてて、なんだかやりづらいんだけど。。。
「何、みてんだよ?」
「あ、ううん...試合、すごかったね?
 あれだけ動いた後なのに、まだ走れるんだ、って...なんかビックリしたから...」
あれ?
「...自分の限界...試してた」
「そっか...でも、海堂君の限界が来る前に、相手の方に限界がきちゃったみたいね?
 やっぱりすごいな、海堂薫は」
ふにゃっと笑う
なんだ、今日は割とマトモな事、いってるじゃないか?
「限界まで、まだまだ、って感じ?」
「...わかんねぇ、でも...」
「ん?」
俺の目を覗き込むように、まっすぐな視線を送ってくる


やっぱ俺、今日もお前の事、名前で呼ぶことができそうにねぇよ。。。


「オイ、手塚部長の応援行くぞ?」
なんとなく照れくさくて、手塚部長の試合を言い訳に、話をはぐらかした

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あきゅろす。
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