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よみもの~中等部編
大切なのは。。。
家に着くと
葉末がぱたぱたと、夕食の手伝いをしている
もうすぐ7時。。。まだアイツは家に着いてないよな。。。
俺は部屋で着替えを済ませ、リビングに降りた
が、急に思い立って、二階に上がり
ケイタイを取り出して、メールをうった

To;家に着いたら電話してください

直ぐに返信がある

 Re;わかりました、あと、20分くらいで着くと思います

その返信をみて、俺は少し安心した
もし具合が悪いのがぶり返していたら、こんなにすぐに返事を寄越してこないだろう

家族で夕食を囲んでいると、ケイタイが鳴った
「ごめん、電話」
口の中の物を急いで飲み込み、通話ボタンを押した
(海堂君?今、家に着いたトコだけど...どうしたの?)
「途中で具合、悪くなってねぇか?」
(ううん、もう気分悪く無いから、ごめんね、心配かけちゃったね?)
「ならいい、それだけ、だから...明日な?」
(うん、ありがとう、明日ね)
よかった。。。俺は安心して、ケイタイを握ったまま。。。
「薫?電話誰から?」
うわっ、俺、ニヤけてないか?
そう考えただけで、顔に熱がこもったようになる
「あ、え?あの菊池さんから」
「まあ、奏音ちゃん?なんて?」
「えっ...と、さっき駅で具合悪そうで...大丈夫かな?って...メールして...」
自分でもしどろもどろになっているのがわかる
そんな俺を母さんはどう思うだろう?食卓に着き、上目遣いに覗きみる
にこ、と笑ってるだけで、何も言わない
葉末は、ヘンな兄さん、と、食事を続けている
俺はバツが悪くて、夕食を急いで掻き込む


「母さん、来週の土曜日なんだけど...」
夕食の片付けを一緒にしながら、俺は何気なさを装って口を開く
「ランキング戦でしょ?お弁当は何がいいかしらね?」
「あ...うん、そうなんだけど...」
バカっ!ここでサラっと言わなきゃおかしいだろうが、俺っ!!
「いや、あの...菊池さんの」
そこまで言って母さんは、何言ってるの?っていう表情になる
「知ってるわよ?二次予選でしょう?
 お父さんはまだわからないけど、葉末と一緒に聴きに行くわよ?
 その日の、夕食はご一緒するって、約束したじゃない
 薫も部活が終わってから来るんでしょ?」
「はぁ?」
俺はおもいっきり脱力した、って、なんで??
「いやぁね、この間、お食事を一緒にした時、奏音ちゃんのお母さんとお話したの、覚えてないの?」
「え?そうだったっけ?」
「そうよ」
母さんは、ふぅっ。。。と、呆れたように溜め息をついた

それからしばらくは会話もなく、黙々と片付ける
「薫は...」
「うん?」
母さんは、すごく優しい顔で言葉を続ける
「奏音ちゃんのこと、本当に好きなのね?」
俺は言葉に詰まった
人間、図星をさされた時程、こたえに詰まる事はない、というが、それは事実だろう
母さんには、嘘はつけないな、と観念する
「うん...」
「お母さんね、あの子は、本当にいいお嬢さんだと思うわ
 素直で、優しくて、ピアノに一生懸命で、がんばってて...
 薫も、テニスに一生懸命でいられるのも、奏音ちゃんのおかげかしらね?」
「そんな、テニスは好きなんだから、一生懸命なの、当たり前だろ
 アイ...菊池、さんだって、ピアノ、好きで頑張ってるんだし」
「でもね、普通はそうじゃないのよ?
 好きな人ができたら、自分を見失ってしまう事の方が多いわ」
俺にはわからない、けど、アイツの事が好きだからといって、
テニスをおろそかにするなんて、絶対にあり得ない事だと思うんだけど。。。
「でも、薫は違うでしょう?奏音ちゃんも、ね?
 お互いが、相手の事を思いやって、がんばりあって...
 それぞれが自分の目標に向かっていられるって、とても素敵な事よ?」
「そうかな?」
そうよ、と、優しく笑う
「本当に好きなら、大切にしてあげてね
 傷つけないであげてね?」
俺は一度、アイツの事を傷つけた。。。
「薫?」
一瞬のことなのに、母さんは俺の不安を感じとったのだろうか?
すこしだけ、心配そうな、でも優しい顔で俺を伺いみる
「うん...」
「それと」
母さんはさっきまでの優しい顔ではなく、すこしからかうような表情になる
「アイツ、とか、お前、なんて、女の子にやめなさい
 知ってる?薫だけよ?奏音ちゃんのこと、名前で呼んであげないのは」
俺は返す言葉が見つからなくて、口をぱくぱくさせる
母さんはふふ、と笑い、お茶、汲れましょうね?とあの花の香りのお茶を汲れた

お茶を飲みながら、俺は穏やかな気持ちになる
つきあってるとか、つきあってないとか、そんなのは問題じゃない
俺がアイツの事を好きか、どうか、それだけだ。。。と

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あきゅろす。
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