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よみもの~中等部編
6 ~canon
明日は連休最終日、岩崎先生のレッスンのある日
このレッスンが、普段の学校の時間割に戻る前のよい刺激となる。。。と、信じたい
だって、ぼけら〜〜〜っと過ごしたこの連休
だらけた体とアタマでは、いきなり「ガッコーモード」には、切り替えられないでしょう、ハイ
レッスンは、1時半からだけど、確か、明日は私一人のはず
先生は、合唱部の練習で午前中もいらっしゃるはずだし、
明日は早めに行ってピアノを使わせてもらおう

朝、予定通りきっちり起きて、朝食をすませると、お昼用にサンドイッチを作った
。。。お母さんが下準備をしてくれていた材料を、パンにはさんだだけ。。。だけど
それから制服に着替えて、レッスン用のピアノの本と、
お弁当のサンドイッチをレッスンバッグにつめた
うん、この調子なら、10時前には学校に着くはず

がらーんとした校舎、こうも人口密度が低い学校というのは、なんというか。。。
いつもよりもだだっ広く感じる
それに、些細な音も響いて、まるで洞窟の中?
第一音楽室は、合唱部の練習をしているようで、ツバメがナントカ〜って聴こえる、様な気がする
日本の曲みたいだけど、なんだか難しそう
ピアノ伴奏も、私の許容範囲をぜーんぜん超えてる
テクニック云々じゃなく、こういう曲はまだ経験ないぞ

私は第二音楽室へと入る
何日も人が入ってないからだろうか?空気が淀んだ感じがする
いつものように、入り口のドアは閉めて、校庭側の窓を開け空気を入れた
今日もいい天気だ、いつもよりはずっと少なめだけど、運動部の声がきこえる
ポン、と、ピアノのキーをうつと、ツーンと抜ける良い音がする
やっぱり、広い所で練習するのは気持ちがいい
最初は、指を慣らすようにゆっくりと弾いてみる
うん、ぼけら〜〜〜っと過ごしてた割には、指はなまってない
それもそーだ、毎日5時間は練習してたんだもんね
というと、お母さんは、私が学生の頃は、休みの日には8時間は弾いてたわよ、と
自慢でもなんでもないわ、それくらい、って。。。イヤミぃ〜
こういう親の態度が、子供のやる気の芽を摘むってわからないのかな〜、もうっ
子供は褒めて育てるべきだよねっ、まったくっ

今日から新しい曲のレッスンがはじまる
ベートーベン ピアノソナタ 8番『悲愴』
一楽章
重く、ゆっくりと。。。しかし、リズムはハッキリと、威厳をもって。。。

この曲は、青学に入学が決まってから
岩崎先生が、まだ難しいかもしれないけど、がんばってみましょうね、と課題にくださった
私はどちらかというと、華やかなモーツアルトや
ベートーベンでもガッテン!力まかせ系が好みだったから
しょっぱなから、ずーん、すごーん、のくせに、うっとりしっとり、なこの曲は、すごーく苦手だった
今でも苦手だけど
その、ずしーんどどーんのしっとり〜、がおわると、
部屋の中で犬が大暴れしてるようなリズムにうんざりする
それもかなりしつこい、やれやれ。。。
音符を追うだけなら、そうそう難しい曲ではないんだけど、なにかこう、しっくりこない
これが『感情移入ができていない』ということなんだな、と思う
思うけど、どうしようもない、だって、感情移入できないんだもん
やっぱり、苦手だ
どう考えたって、私は『悲愴』ってキャラじゃない、そりゃムリってもんだ
多分、先生は冬か来春のコンクール用の曲として準備をしているはず
だけど、どうも苦手だ
どうせならもっと、派手〜で、キラキラ〜〜な、
それでもって、ガッテンな曲を選んでくれたらいいのに
。。。そんな曲があるのか?あったら是非!弾いてみたい!!

一通り練習がおわると、良い感じにお昼の時間になっていた
ピアノから離れて、もそもそとサンドイッチを食べながら、自分なりに曲の解釈をしてみる
。。。が、やっぱり。。。わからん
わからないけど、とりあえず、一楽章は激しいんだなくらい?
二楽章は、うっとりしっとりで、三楽章で今までのストレスを発散させよう
。。。所詮この程度
いやいや、先は長いんだ、今日はこの程度でもいいや
とりあえず、今は、楽譜にかいてある音に忠実に弾いてみることとしよう、うん
かなり楽天的である、と、一人で完結して爆笑した
。。。まわりに誰もいなくてよかった。。。

そうしてるうちに、外からテニスボールを打つ音がきこえてきた
カポーン カポーンと、抜ける乾いた音
なんだかとても気持ち良さそう


家に着くと、お母さんがリビングでピアノを弾いていた
んもうっ、なんでイヤミったらしく、同じ『悲愴』を弾いてんのよっ
それも、防音の効いているレッスン室ではなくて、わざわざリビングのピアノで
多分今時点、テクニックでは私の方が上。。。だと思う
それはお母さんも認めている
けど、未だに出産育児のブランクがぁ〜と、恨みつらみを言いやがる、全くこの母親ときたら。。。
でも、感情をのせるのはハンパじゃなく上手い。。。と、思う
悔しいけど、これは一生かかっても、勝てる気がしないそれじゃ、ダメなんだけど
前にどうやったらそんなに弾けるの?と、訊いたことがあった
その時「奏音ちゃんだって、モーツアルト弾く時楽しく弾くじゃない?それでしょ?」と返された
そりゃま、そうだけど、んじゃ、どうやって『悲愴』にするのよ?
「悲愴って、悲愴だから悲愴なんじゃないでしょ、自分で物語をつくっちゃえば?」
。。。あ。。。アホ。。。もとい、なんてお気楽なんだ
自分の母親ながら呆れ。。。もといその2、感心してしまう。。。
この楽観主義さ加減

夕飯と入浴をすませ、明日からの学校の支度をしに自室へあがった
明日の時間割表を見ながら、教科書やノートをそろえる
そして、新たに、小さなポーチが荷物が加わってしまった
オンナノコの日を、迎えてしまった私は、
とりあえず、オンナノコ期間がおわっても、一応の準備を。。。
あ、嫌なこと思い出した
あぁ、あれ、絶対、海堂君にわかってしまったよな
確かめ様がないけど、あの雰囲気、そして、あの態度は絶対そうだと思う
明日、ちょっと気まずいな、いや、かなり!気まずい
けど、お礼、言った方がいいかな?いいよね?親切にしてもらったんだし
でも、どう言ったらいい?
普通に、保健室についてきてくれてありがとう、で、いいか。。。な?
海堂君、ちょっと恥ずかしがりやさんっぽいし、それ以上は会話も続かないよね
そんなことを、ぐるぐる、小一時間程考えて。。。といっても、多分2〜3分のことだけど、
よしっ、普通にしとこう、そうしよう

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あきゅろす。
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