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3.序章その3


お弁当を持って屋上に昇ると、既にお弁当を広げた生徒達がちらほら。

場所をとって、座ったところで現れた人影。


「凜。………と、平助」


そこにはコンビニ袋を持った沖田、斎藤くん、そして仕事を終えたであろう山崎先輩。
そういえばこの三人は同じ中学出身だった。


「ちぇ。なんだよ総司。今日は千鶴がいねえから、あの野郎も来ないと思って凜とゆっくり弁当を…」

「そういえば今日は休みなんだね、千鶴ちゃん」

「うん、家の用事らしい」

「俺、ハブかれてねえ…?」


平助の可哀相な声を無視して沖田達3人はあたしの隣でお弁当を広げる。



「なんだ、今日は我が妻はいないのか」



独特の低音に振り向くと、


「出たな婚活鬼!」


先程平助にあの野郎呼ばわりされた、薄桜学園生徒会長、風間千景が金髪を風にそよがせて立っていた。校則違反ばっちりの白い学ランが相も変わらず似合う美形は、千鶴に関われば台なしである。ちなみに薫と同じG組。
後ろにいつもの二人を携えて、彼は笑っている。


「不知火、天霧さん、いつもご苦労様」

「おい、俺を無視するな。我が妻の子分の分際で」

「残念だけどあたしの『親友』の千鶴はお休みです。わかったらさっさとあっち行って、千景」

「……貴様…生徒会長であるこの俺にそんな口をきくなど…」

「だってあんたあたしの元中だし。生徒会長とかめんどくさい、向こう行って」


何を隠そう、あたしにとって大事な千鶴に詰め寄るこの横暴生徒会長から千鶴を守るのが生きる使命である。


「…ハッ、貴様も今流行りのツンデレという奴だな」

「…はあ!?」

「凜が、ツンデレ…!?」

「ふうん。おもしろいこと言うんだね、風間。あながち間違いではないかも」

「沖田まで…!!」

「…つんでれ、とは何だ?」

「斎藤くんは知らなくていいよ」

「一くん、ツンデレって言うのはね、凜や薫みたいな子のことだよ」

「間違ったこと教えんな沖田!!……でも薫はツンデレで合ってるかも…」


ヤンデレでもあるけど。
とにかく千鶴と薫はあたしの嫁…じゃなかった天使!


「…ってわけで千鶴に近付くな変態婚活鬼!」

「お前も変態だろ。女としてどーよ」

「うるさい不知火。シバくよ」

「やっぱツンデレじゃねーか」

「違うってば!」

「…フン。まあいい」


風間千景はあたしをじっと見つめると、


「…な、何…」

「黙っておとなしくしていればいいものを」

「ちょ…っどこ触って…!」

「お前があいつの代わりに俺の妻になればあいつから手を引いてやってもいい……ただし、あいつのように慎ましくするなら、だがな」

「…っ、遠慮する。千鶴は、あたしが護るから!」


顎に添えられた風間の手を払いのけ、きっと睨むと千景は面白そうに口角を上げた。


――むっかつくゥゥウ!!!!!


「風間、凜に触らないでよ。凜はお前みたいな奴のお嫁さんには向かないよ」

「…当たり前だこのやろう」

「総司の言う通り。諦めたほうがいいぜー、風間。凜は千鶴みたいに慎ましくなんかできないから」

「そういう意味か!シバくよ二人とも」


確かにできないけどさ!!
自分は護られるより護るほうが向いてる気がする。


…あれ、なんかあたしホントに女としてどーよ?


「え」


と、ぐいっと引き寄せられた。
見上げると深い色の瞳と目が合う。


「大丈夫だ」

「…え?」

「東城は、俺が護る」

「……っ…!!」


射たれました。


「あ、一くんずるい。一人でいいとこ取って。凜固まってるじゃん」

「俺は別に、思った事を言ったまでだ」

「またまた、凜だからでしょ」

「…そ、んなことは…!」

「はいはい。噛んでる噛んでる」

「さ、斎藤くん……あの…」

「どうした、東城」

「あ、あんまり女の子扱いしないで……その…て、照れちゃうから…」


((((デレた…!!))))


(めったにデレない凜が…!)

(凄いね一くん)

(((…………)))

(あ、こんどは山崎くんが固まった)

(風間千景もなんか固まってるぜ)

(風間を固めるなんてやるな、凜)

(…あ、不知火、だっけ?馴れ馴れしく凜のこと呼び捨てにしないでくれない?)

(は?あいつは俺の元中だし。もうとっくに唾つけてんだよ)

(…へえ。言っとくけど、譲らないから)

(おいおい、何二人で取り合ってんだよ。そもそも…今日はもともと俺が凜と昼を…!!)

((黙れ))

(……スミマセン)


そんなこんなでそれぞれの思惑が交錯する、薄桜学園のお昼休み、屋上でのひと時だった。


……斎藤くん、まじかっこいい…!!





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愛されはちゃめちゃツンデレヒロイン。次回はやっと我が天使、千鶴を…!!


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あきゅろす。
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