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28.思春期イコール発情期


「皆に二つ報告がありまーす」


練習終わりのミーティングで、あたしは声を張り上げた。


「馬鹿に元気だね。凜」

「凜が馬鹿なのはいつもだろー」

「そこ!うるさい!」


総司と平助にピシャリと怒鳴ってから話を続ける。


「この度、この東城凜、正式に剣道部マネージャーに所属しました!」


シラケるかな、と思っていたのに、予想に反しておおっと所々から歓声が上がった。


「凜、今まではマネージャーじゃなかったのか?」

「平助も馬鹿だね。今まであたしは千景の書類に躍らされてたでしょ」

「体操部は?」

「どうせ廃部になるんだったらって思って、辞めますって言ってきちゃった」


我ながら潔い行動だと思う。
結構頑張ってきた体操を辞めたこと。


「ってことで、これからは剣道部に命懸ける予定なんでよろしく!」


ともあれ、打ち込むことがが一つに絞れたからよかったと思う。



「んで、もう一つの報告。今年もお世話になるはずだったお寺が工事で使用不可になったので、今年の夏季合宿は学園でやりますー」


「「「……え…!?」」」


部員達は全員揃って目が点。
それを見て千鶴が苦笑した。

あたしは去年の合宿を知らないけど、そんなにショックだったんだろうか。


「…え、ちょっと待て。凜。マジかよ!?」

「マジです。土方先生からの伝言。てか、そんなに驚くこと?」

「なんか気が抜けるよね。僕達はあっちで練習する気になってたのに」


口々に文句を言い始める部員達。
そりゃ気持ちは分からなくもない、けど今さらぐだくだ言われたってどうにもできないし。というか、土方先生に言いに行けばいいのに。

言わせたままじゃ、と口を開く。


「皆今さらそんなこと…」

「皆さん聞いてください…!」


言いかけた言葉に重なったのは千鶴の声だった。

千鶴はなかなかに真面目な表情で口を開く。


「『合宿が学校になったこと、黙って受け入れてくれたら、打ち上げの海水浴で凜ちゃんのプライベート水着姿閲覧を特別に許可する』by左之先生!だそうです!」

「へ!?何言いだしてんの千鶴!」

「さらにさらに、『特別に下ろしたて黒ビキニ仕様』だそうです!」

「ばっ…!ちょ、千鶴!?」


「「「うォオォオオ!!!!!学園合宿どんと来イィイ!!!!」」」



こいつらは馬鹿なんじゃないかな、と部員達を見て思いました。




発情気真っ盛りの高校生男子の集まる部だから、仕方ないと言えば仕方ない、かもしれないが。


とりあえず左之兄…左之先生はシメとこうと思います。


「相変わらずだね、凜」

「何がよ。ってか、なんでそんなに嬉しそうなの、総司」

「だって凜の水着姿なんて、普段は左之先生のガードが堅くて見れないし。…盛大に笑ってやろうと思って」

「そうか、総司もシメられたいか!今なら二人セットで楽園に連れてってあげるよ」


思いっきり睨んでやると、総司はダメージを受けた様子もなくにやにやする。

ほんと、馬鹿だけど最近ちょーっとだけ格好よくなったなーなんて思ってたあたし馬鹿だな。
いや、馬鹿なのはあたしじゃなくて総司のほうか。


「人のこと馬鹿馬鹿って。逆に僕がシメ殺してあげようか」

「人の心勝手に読むな!」

「全部口からだだ漏れ。ほら、遠慮しないで。僕が君を楽園に連れていくから」

「シメるの意味が違う!首!絞めんな、…やめ、…ぅ…っあ…、」

「はいはいすぐいかせてあげるから」

「嫌、や……ぅ…あ…ぁ、あ…っ」


「凜。」


苦しさから涙目になりながら平助の声に周りを見ると、部員全員、千鶴までもが真っ赤な顔であたしとあたしの首を絞める総司をガン見していた。


「凜……声、自重してくれよ…」

「東城さんヤバいっす…」

「俺鼻血出る…げ、マジで出てきた」


ティッシュを探しにトイレへ走る部員。
もがきだす部員。
泣きだす(!?)部員。


「……なにコレ、地獄絵図?」

「破壊力ありすぎたみたいだね。真夏にしては刺激的すぎたかな。どう責任とるつもり?凜」

「総司があたしに殺人未遂しかけるからでしょ」

「やだなあ。僕はあの世に逝かせてあげるって言っただけだよ。皆を発情させる気なんてなかったし」


発情……?


「凜、自分の潜在的なエロさにそろそろ気づくべきだと思うよ」

「あたしは変態か!」

「東城。……その、…ミーティング中にそのようなはしたないことは避けるべきだと、思うが……」

「斎藤くんまで!」

「っていうか一くんも、そんな真っ赤な顔で言われても説得力ないよね」


本当に斎藤くんの顔が真っ赤だったから、あたしは驚きを通り越して心配になった。
微かに頬を染めた彼なら何度か見て知っていたけど、真っ赤になったのは初めて見た。普段冷静な斎藤くんでも、真っ赤になることがあるんだ。


「と、とにかく!合宿は再来週からだから!体調管理に気をつけてね!」


熱気でむせ返る剣道場、異様な光景の中帰りのミーティングはお開きになった。





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