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15.お願いは全力で


中間テスト終了の翌日、7時間目のホームルームにて。


「つーわけで言うわけで今日はスウェーデンリレーについて話し合うから!一人は凜が出てくれるってさ!」

「マジでかァア!!藤堂ナイス!!」

「藤堂くんさすが!!ありがとう!!!」

「へへ、感謝しろよみんな!」


教卓の前に立った平助がなぜかクラスメイト達から喝采を浴びている。

凜はというと、不機嫌そうに膨れっ面で机に頬杖をついていた。

僕は彼女に椅子ごと近寄って話しかける。


「皆ずいぶん湧き立ってるね」

「おい、そこはあたしに感謝する所じゃないのか皆」

「凜は人気者だねえ」

「どーせ皆、あたしに変な衣装着せて笑いたいだけでしょ」

「それもあるけど、凜は援団で衣装着ないわけだから、何かさせないとって思われたんじゃない」


そう、じつは学園一美人の凜。千鶴ちゃんもかわいらしいけど、やっぱり凜の色気とスタイルは学園内でも有名だ。むかつくことに。
当然彼女はモテるのだが、僕が男子を粛清したりラブレターを抹消したり、風間が権力で根回ししてるおかげで凜は能天気にも全くそんなことに気づいていない。

凜が援団に参加しないと知った時の凜ファンの多数の女子群、男子群の落胆様は普通じゃなかった。身投げしようとした奴までいたから笑えない。しなかったけど。


「衣装決める前に凜の相方を決める。女子は全員援団に入ってるから、できれば援団入ってない男子からだなー」


平助の言葉に、女子達の中からブーイングが起きた。同性にもモテるってのも考えものだ。

対象的に男子達は沸き立つ。援団やめるとか言い出してるよ。こいつらにとられるなんて癪だから僕も立候補しようかなあ。


「…えっと……乱闘になるとまずいし、凜の意見を聞こうぜ。な?」


冷や汗を流しつつ言った平助に凜はすっと立ち上がって、とある席の前でその机の主に話しかけた。


「…さ、斎藤くん、あたしと、スウェーデンリレー…やってくれない…かな」


彼女らしくない、しおらしい態度で小さく言った凜は、顔を赤くして相手を伺った。気に入らない。

相手の一くんはというと、驚いて目を見開いている。驚いている一くんなんてなかなかレアだ。写メっとこ。


「か、構わないが…俺でいいのか?」

「うん……テスト、無事に全教科平均点以上採れたから、もし…あ、あの約束が有効なら、と……。風紀の仕事もあって、大変だと思うんだけど……」

「そうか。力不足かもしれないが、俺に務まるのなら」

「い、いいの?本当?」

「俺は一度した約束は守る。なんでも願いをきくと言ったのは確かだ。…それに、」

「それに?」

「俺は……あ、相手が東城なら……東城の願いなら、悪くないと…テストの結果に関わらず、だ」


あ、今一くん、凄くかっこいいこと言った。ずるい。


「…っ!…あ、ありがとう、斎藤くん!」


赤くなってはにかむ凜がなんだかくやしくて、僕は自分が不機嫌になっていくのを感じた。


「んじゃあスウェーデンリレー、二人目は一くんってことでいいか?」

「まあ斎藤なら…」

「斎藤くんなら凜にとって安全よね」


口々に言うクラスメイトに平助は頷く。
いつもずるいよね、一くんばっかり。


「じゃあ決定だな!よろしくな二人とも!衣装係は千鶴に任せるから」


ちょうどチャイムが鳴ったのでホームルームはお開きに。

僕が駆け寄るより先に、凜は一くんと話しだしていた。


「ありがとね、斎藤くん」

「いや。よろしく頼む」

「うん、よろしくね。衣装…千鶴なら大丈夫だろうけど変なのにならないといいね」

「ああ。……そういえば、」

「え?なに?衣装のこと?」

「そ、そうではなく……試験、無事に終わったようで、」

「うん。斎藤くんが勉強みてくれたおかげだよ!ありがとう」


凜がふわっと笑う。一くんの頬が赤く染まるのを、僕は遠くから見ていた。


「…それは、東城が頑張っていたからだ。よく、頑張ったな、東城」

「……!!…斎藤くん…!」


一くんが顔を赤くしながら凜に笑いかける。

一くんに負けないくらい頬を赤くした凜を見た僕は、どうしようもないくらいイライラした。

僕以外にそんな顔見せていいと思ってるの、凜。


どう報復してやろうかと考えて、得体のしれない苛立ちを消そうと必死な自分がいた。





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あきゅろす。
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