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13.テスト勉強は早めに


「凜ちゃん、ポッキー食べる?」

「あ、ありがとー、千鶴!」

「あ、いいな凜。千鶴ちゃん、僕にもちょうだい」

「どうぞ、沖田さん」


昼休み、委員会が終わって教室に戻ると雪村のポッキーを食べながら教室でだべっている剣道部員達がいた。


「斎藤くん!お帰りー。委員会お疲れさま」

「…ああ」


東城が明るく笑って手を振る。
机の上にはお菓子を初め、大量の不要物。注意をすべきか迷ったが、なにもいわずに椅子に座った。


「ポッキーは極細が美味しいよね。あ、平助、それ今週のジャンプ?寄越して」

「え、俺まだ読み終わってな…」


東城が平助からジャンプを奪ってパラパラとページを繰る。雪村が横からそれを覗き込んでいた。


「ねー、斎藤くんはジャンプだったら何が好きー?」

「やっぱりONE PIECEでしょ」

「総司に聞いてない」

「いや、そこはスケダンだろー」

「中の人贔屓か!スケダンもいいけどやっぱ銀魂でしょ!ね!斎藤くん」

「それより、中間考査は大丈夫なのか?もう2週間前をきったが」


東城と平助が俺の言葉にピシリと固まった。東城の手からはらりとめくりかけていたページが落ち、同時に平助はつまんでいたポッキーを下に落とした。


「ちゅ、中間…?もうそんな時期かよ」

「中間?なにそれおいしいの?」


真っ青になった平助をよそにさっさと立ち直った東城はポッキーを口にくわえてグレた。煙草のつもりなのか、それは。


「ケッ、テストなんてねー、どうにでもなればいいのよ!頑張ったってどうせいい点なんて採れっこないんだし」

「へえ、凜はテスト勉強頑張ったことなんてあったんだ」

「あるよ!一夜漬け必死に頑張って点採れないテストなんてあたしは認めない!」

「東城、それは頑張ったとは言わない」


東城は雪村が持ってきた試験の範囲表を指でピンピン弾いた。


「見てよ、この範囲。化学と数学とかマジ鬼畜でしょ。あたし数B苦手だしっ。ベクトルとかマジ意味不」

「だ、大丈夫だよ凜ちゃん、これから勉強すれば……」

「千鶴は頭いいからそんなこと言えるんだよ。あたしたち頭悪い愚民は一夜漬けかバックレるしか乗り切る手段がないのだよ。ね、平助!」

「俺も同類かよ…」

「あれ、違うの?もしかしてちゃんと勉強してるの?平助のくせに?」

「してねえけど…ムカつくな」

「ま、凜が勉強なんてしたら世の中狂いそうだけどね」

「そういう総司はどうなの、勉強してんの?」

「僕はテストごときに貴重な時間を割いたりしないからね」

「それまるっきり放棄してんじゃん」

「そんなことはないよ。もともと勉強しなくてもそこそこ点は採れるし。古典は採らないけど」

「相変わらずだな、土方先生が噴火するぜー」

「なにその天才脳!いいなー、ちょうだいその頭」

「凜には使いこなせないと思うよ」

「ちっ」


東城は舌打ちして机にべたっと上半身を投げ出した。


「でもまあなんだかんだで赤点は避けたいよねー。今までは一夜漬けでぎりぎりなんとかなってたけどさ、二年になったしそうもいかないよね」

「嘘つけ、俺数学の赤点者の追試でお前見たことあるぞ!」

「数学だけね。とっきどきなんとかならないときもあったんだよ」


どうやら東城と平助は数学に関しては赤点常習犯らしい。前に委員会で名前が挙がったこともあった、が、口には出さないでおいたほうが良さそうだ。


「せめて赤点で済むといいなー。青点とか黒点とか採ったらどうしよう」

「なんだよ、青とか黒って」

「平助知らないの?うちの学校では平均点の半分が赤点、赤点の半分が青点、そのさらに半分が黒点だよ。僕はまだ色つきは採ったことはないけど」

「あたしもまだ赤点までかな。数学でね」

「…待て、赤点の4分の1が黒点だよな?」

「そうだけど……もしかして平助、」

「いや、ないない。ギリ黒点はセーフ」

「でも平助くん、それって青点は採ったことあるってこと、だよね…?」


雪村の言葉に平助は机に泣き崩れた。


「ま、かわいそうな平助には関係ないけど白点っていうのもあるんだよ」

「え?白点って何点?凜ちゃん採ったことあるの?」

「ないないないないぜったいない。白点ってのは99点のこと」

「99点!?それって俺じゃなくてもほぼ皆ありえないだろ」

ガバッと机から顔を上げた平助。99点、か……。


「でも、なんで白なのかな?」

「百から一引くと白、で、99点のことだってさ」

「へえ。そんな点もあるんだ。初耳」

「拝むことすら難しそうですね……」

「でも僕、白点なら見たことあるよ。ね、一くん」


総司がニヤリ意地の悪い笑みを向けた。


「え、もしかして斎藤くん、白点採ったことあるの!?」

「マジかよ!!99点だろ!?」


身を乗り出してきた東城と平助に俺は少し腰が引けた。


「マジだよ。一くん、一年の学年末で古典99点だったよ」

「総司…!何を勝手に、」

「本当に!?しかも学年末!?凄い斎藤くん!さすがぁ」


きらきらと目を輝かせる東城に、俺はなにも言えなくなってしまう。古典で99点を採ったのは事実なので、否定はしようにできないのだが。


「やっぱり斎藤くん頭いいよねー。古典が土方先生だから頑張ったとかじゃないんでしょ?」

「土方先生は特に関係ないが…」

「一くんは土方先生に固執してるからなー」

「一くんが凄いのは古典だけじゃないよ。名前張り出されてるの、見たことあるでしょ。僕は毎回答案返却のときにのぞき見してたけど」

「はっ、それは自慢か!斎藤くんと去年同じクラスで仲良しこよしだったって言いたいの?全然羨ましくなんかないんだからね!」


東城は目を泳がせながら総司を見た。
総司はそんな東城を見てくくっと笑う。


「やだなー中間……あたし勉強苦手だもん。グレちゃおっかなあ」

「凜、土方先生に怒られるよ」

「怒られるどころか殺されそうだもんね、あの自己中鬼教頭」

「あわわ、凜ちゃんもうグレてる…!」

「東城、土方先生を侮辱するな」

「ごめんね、斎藤くん」

「直り早ッッ!!」


しゅんとした東城の頭をぽんぽんと撫でると、東城は驚いたように目を丸くした。


「さ、斎藤く…!?」

「東城、…もし全教科平均点以上を採れたら、俺がなんでもひとつ宮崎の願いを聞こう」

「…え゙っ!!ほ、ホントに!?なんでもいいのっ!?」

「ああ。この間のハンバーガーの礼だ。だから、頑張れ、東城」

「…!っ、う、うん!頑張る!」


首をぶんぶん縦に振って、素直に頷いた宮崎に笑いかけると、東城は湯気が出そうなほど顔を真っ赤にした。

その姿が、普段の強気な彼女らしくなくてなんだか……とても、愛おしい。



「わからないところがあれば、力になる」

「う、うん!ありがとう斎藤くん!」

「東城だけずりぃ!一くん、俺にも勉強教えてくれよ!」

「別に、構わないが……」

「やり!」

「いいな、一くん。やるね」


総司が意味ありげに含み笑いを浮かべた。

とにもかくにも、中間考査まであと2週間である。




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