第二講 好きにしろ
キーンコーンカーンコーン、といかにもそれらしいチャイムが聞こえるのと同時に到着した教室。天井付近の壁から突き出る《3Z》の表示看板。教室の中からは賑やか、というか騒がしい音声が聞こえる。
「緊張してんの?宮崎。お前らしくもねえ」
ニタっと笑う先生。
「緊張なんてしてないですよ、銀八『先生』?」
「…なんかムカつくわ、お前に『先生』なんて言われると」
「まあ本編では『銀さん』ですしね。…あ、じゃあ『銀先生』って呼ぼ」
「おい、それじゃなんのパロディかわかんねーじゃねーか」
「だって新八と『八』がかぶるんですよ。ややこしいし」
「…好きにしろ」
「わ、やった!」
なんかちょっと嬉しい。先生にあだ名つけるの好きかも。
「きりーつ、礼、着席」
日直である新八の号令と共にガタガタと席につくクラスメイト。
「じゃー朝のホームアンテナ始めんぞー」
「先生」
早速手を挙げたのは桂。
「あンだよ、ヅラ」
「ヅラじゃなくて桂です。それから正しくはホームアンテナじゃなくてホームルームです。それじゃ屋根から出た棒になっちゃいます」
「あんだよ。じゃあ朝のホームメード始めんぞ」
「先生!意味が全然わかりません〜!もうちょい簡単な日本語でお願いするアル」
次に手を挙げて言うのはモグモグと口を動かしている神楽。
「俺だって知らねーよ、むしろお前のほうがわかってんじゃねーの、留学生だろ。つーかお前もう早弁かよ」
「朝から英語なんて無理です。ちなみに私の国には『朝の体操はラジオ体操のみ、よく着る色は紺色です』っていう格言があるネ」
「あーはいはい、そーですか。とりあえずその手に持ってるタコさんウインナーを捨てるか食うかしろ」
「すてふなんてもったいないれふ、ちゃんほはべるアルヨ。ほれにタコはんやなくてタコはまアル!」
モグモグやっている神楽をよそに、さっさとしろよー、と声を漏らすクラスメイト。
その暇な空気の間にだんだんと騒がしくなる教室。
がやがやと話しはじめ、中には物が飛ぶのが見える。まあ妙が近藤に投げた辞書なのだけど。その近藤は疾風の如く飛んできたそれをモロ頭に喰らってごふぅ!!!と声を漏らしている。
それに便乗するようにさらに騒がしくなった教室に、
「あ、そうそう。アレだ、転入生来たから」
妙に間延びした銀八の声が発せられた。なぜか騒がしい中にも通る声である。
え、とかたまる3Zメンバー。
「おい、入れ宮崎〜」
言われてガラッ、と扉が開く音がして、教室に入って来たのは、銀魂高校のセーラー服に身を包み、凛とした空気を纏った、なかなか、…いやかなりの美人だった。
「宮崎です。よろしく…」
「あ、舞希アル!!お〜い!!」
声のほうを見ると椅子の上に立った神楽が両手を大きく振っている。
「あ、神楽!」
「わ〜やっぱり舞希アル!!お元気アルか〜?」
「いーからとりあえずお前は席に着け、チャイナ娘」
言われて神楽はちぇっ、と小さく呟いてから、渋々席に座る。
そして言った主の銀さん…じゃなくて銀先生は、ゴンゴンという音をたてながら白いチョークであたしの名前を黒板に書く。
「えーとォ、今日から3Zに入る、宮崎舞希だ。まー皆仲良くしてやってくれや」
「先生!」
「あ?ンだ、神楽」
丸眼鏡をかけた神楽がしゃべりだす。
「なんでこんな不自然な時期なんですか?舞希は本編でもうずいぶん前に万事屋に来てるアル」
「そうでィ、小説だって随分前から買ってあったじゃないですか。そこんとこどう説明してくれるんですか」
「ちょ、神楽ちゃんに沖田さん…!」
新八が慌てて二人を見るが、銀先生は「あー」と呟き、
「アレだよ、季節を考えた結果、管理人がいろいろめんどくせーってうんざりしちゃったわけよ。それにホラ…なんかこう、色々あんだよ、ポリシーっつーヤツが」
「明らかただのめんどくさがりじゃないですか!」
「いや、確かにいろいろと大変だよなあ…。職探しもだけど」
どこに共感しているのかまったくわからないが深く頷いている長谷川さん。
「ま、そーゆーことで諸事情によりこんな不自然な時期だけど、まあ仲良くやれよ」
ああそれと、と銀先生は続ける。
「今日の6時限目は…まあアレだ、なんか話し合うことあった気がすっからちゃんと考えとけよー」
いや、何をどう考えろと?
てか、先生もうわすれちゃったの!?
校長室で血を噴出させていたハタ校長を憐れむと同時に朝のホームルーム終了のチャイムが鳴った。
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