[携帯モード] [URL送信]
第一講 え、まさか。


「よし、行くか!」

『都立銀魂高校』と書かれた門の前から、あたしは足を踏み出した。

宮崎舞希、今日からこの銀魂高校の生徒になります。








「おー、君が宮崎くんかね、待っておったよ、余がこの学校の校長、ハタ皇子じゃ」

頭からみょん、とヘンな触覚がでた宇宙人(?)が校長イスで言う。

「皇子っておかしいだろ、本編持ち込んでんじゃねーよ」

「いーじゃん、なんか皇子ってつけたほうが格好よくない?てかその前にお前はそろそろ敬語を覚えようか」


校長の横でメンチをきった、ジャンプスクエアに目を落とす触覚持ちは教頭のようだ。


「あのね、非っ常〜に申し訳ないんだけど、実はクラスに空きが無くてね」

「え、じゃあ私…」

「や、ちゃんとクラスには入れるんだけど、その、ちょっと、てかかなり普通じゃないクラスなんじゃ」


え、まさか。


「宮崎くん、君には今日から…」

と、ガラッ、と開いた校長室の扉。


「ったくめんどくせーな…呼び出すんじゃねーよ、何回目だコノヤロー」


「3年Z組に入ってもらうから」


現れた銀髪天然パーマの教師とハタ校長の言葉に、あたしは目を剥いた。

ずり落ちた眼鏡。くわえ煙草。だらしなく着た白衣。
とうてい教師とは思えない死んだ魚のような目。今日もダルさ全開、3年Z組担任、坂田銀八である。

やっぱりこの人か……とあたしは内心で落胆する。


「なにが『呼び出すんじゃねーよ』じゃ。言っておいたろう、転入生が来ると」

「あー、言ってたよーな言ってなかったよーな」

「…よーするに聞いてなかったってことじゃな?まあそーだろうとは思ってたけど」

「聞いてましたって、『今週のジャンプ2冊買っちゃってカブった』って話だろ」

「うん、完璧聞いてなかったね。つかそれは坂田先生、君のことじゃろうが」


一呼吸置いてはあ、とため息を吐くハタ校長。


「ってことでどーも、担任の坂田銀ぱっつぁんでーす。よろしく宮崎サン」

「あ、はあ、よろしくお願いします…」


軽く頭を下げる。


「んじゃ、行くか」

くるりと背を向けて扉へ向かった先生に、

「待て、坂田くん。君、今日の6時限目のこと忘れてないじゃろうな」

校長の一言。

「は?」

振り返る先生。

「なんかありましたっけ?」

「やっぱり忘れとったな、引き止めて正解だったよ」

「あ〜なんすか?さっさと言えや部長〜」

「部長じゃないから。なにココ、なんの部?いい加減その手のボケ諦めてよ」

「んで、なんだよその6時限目って」


ハタ校長のツッコミを綺麗に無視して頭をボリボリ掻く先生。

「この時期に話し合うことと言ったらアレしかないじゃろうが。まったく君は自分の勤める学校の行事予定も把握してないのかね」
「そんなモンこの俺が把握してるはずないってことを把握してないんですかアンタは」

「すみません。あ、また引っかかっちゃったよこの手の言葉のマジック」

「いーからさっさと言えよ、用を」

ハタ校長の突き出た触覚をむんずと掴み引っ張りながらガン飛ばす先生。

めきめきと今にもちぎれそうな音を立てる紫色の触覚。


「いや、ちょ、だから余のチャームポイントひっぱんないで、やっと生えたばっかだから、」

「なんなんだよ6時限目って」

「1ヶ月後にあるじゃろうが!球技大会が!!それの種目ぎめじゃよ!」

「…あ〜、んなことですか」

先生は空いているほうの手で頭をボリボリと掻く。

「そ、そうじゃ、だから今日のLHRで話し合いを…」

「んなこと急に言われてもよ、アイツらからまともな提案がでると思うか?」

「思わん。てか急じゃないし、てかホント痛いから離し…」

「んな無理難題押し付けんじゃねえよ毎度毎度よぉ!?」

先生は勢いのままに触覚をとひきちぎった。ブチィッ!!!!と可哀相な音が鳴る。


「い、いいい坂田くん!?」


どくどくと溢れるハタ校長の鮮血が校長室の床に広がる。
かなり悲惨な光景だ。

「ちょ、痛いってマジで、ほんとどうしてくれんの、マジで余のチャーム…」

「行くぞ宮崎」

「え、はい」

ぎゃあぎゃあ泣きわめくハタ校長を綺麗に無視してくるりと踵を帰した先生を追いかけて校長室を出た。




[次へ#]

第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!