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オープニング
旅立ちA
昼過ぎ、
ヨミはカバンを持って立ち上がる。

すぐにでも出発したいところだが、ハンター試験をのことをまだ告げてない家族がいた。


(お母さんやイル兄、キルア達にも伝えないと………あとおじいちゃんにも。)


まずキキョウにその事を伝えると、「今晩はご馳走!」とはりっきていたが、
今出ないといけないと言うと、


「じゃあせめてお洋服だけでも!」


と目を輝かせてヨミを衣装部屋まで引きずっていった。


『お母さん、別にいいですよ。そんな…。』

「まあまあまあヨミちゃんったら!女の子なんだから、身嗜みは大事よ!どんなときでもね!」


着せ替え人形はいつものこと。

だが今日は、全体的に動きやすい服装をチョイスしていくキキョウ。
大きく動くだろうと予想していたヨミも、今回ばかりは少し嬉しそうだ。



(ゴスロリには代わりありませんが。)


改めて自分の母はゴスロリしかない事を痛感して、キキョウの元を後にした。




ヨミは暫くゼノや兄弟を探したが、家のなかに居ないのか見つけられずにいた。

そこに丁度ゴトーが通りすがったので、皆がどこにいるか聞くことにした。


『あの、ゴトーさん。』

「はい。何でしょうか、ヨミ様。」

『おじいちゃんとミル兄以外の兄弟達がどこにいるか知りませんか?』

「ゼノ様とイルミ様はお仕事で、今晩お帰りになられるそうです。
キルア様は庭におられます。
カルト様は拷問の訓練中です。」

(皆何かしら忙しかったり、家にいないんですね。)

『そうですか。ありがとうございます。』


そう言って回れ右をしようとした時、ゴトーに呼び止められた。


「ヨミ様。」

『ん、はい?』

「……お気をつけて、いってらっしゃいませ。」

『!!…はい!いってきます!
カルトにも伝えてください!』

「はい。かしこまりました。」


ヨミは笑顔で手を振り、廊下を走り出した。











家を出て森の中を歩くこと数分。

門に着くまでにキルアに会えれば、と考えていたがうまくいかない。


『ただでさえ広いんですもん。そう簡単には会えませんか…。』


おもわず独り言を呟いてしまう。


(いや、もしかしたら会わない方が良いのかもしれません。会うとつらくなるかも。

それにおじいちゃんとイル兄は変に勘が鋭いですし、家出だとバレてしまうやも…。)

「お姉ちゃ~~~~ん!」

『へ?』


ぼぅっと考え事をしていると、前方からイルミとキルアが歩いて来ていた。

するとキルアはイルミの横を抜けヨミに向かって走りヨミに抱き付いた。


「お姉ちゃん!」

『キルア、けっこう遠くで遊んでたんですね。楽しかったですか?』

「うん!」

「ヨミ。」

『イル兄、お帰りなさい。
帰りは夜になると聞いたんですが…。』

「仕事が案外簡単だったからすぐ終わってさ、俺だけ帰ってきたの。」

『おじいちゃんは?』

「他に用事があるんだって。
ところでヨミはどうしたの?」

『実は、ハンター試験を受けにいくんです。だから暫くは帰ってこれないかも。』

「へぇ、ハンター試験。」


そこでイルミが黙ってしまったので、ヨミは(もしかしてバレた?)とヒヤヒヤしたが、
イルミは何事もなく「気をつけて」と言った。


「お姉ちゃん、どっか行くの?」

『はい。ちょっと行ってきますね。』

「一緒にいく!」

『えっ』


それはヤバい、
と真剣に困った顔をしてしまったヨミ。

本来なら軽く断ればいいものの、今のヨミには余裕が無かった。


「だめだよキル。
キルだって明日から暫く出掛けるだろ?」

『どこにいくんですか?』

「天空闘技場。」

『そうだったんですか!?
頑張ってくださいね、キルア!』

「うん……。………じゃあ、帰ったら一緒に遊んでね!」

『!』


ヨミは不意にも黙ってしまった。



「帰ったら」



(私がここに帰ることはあるんでしょうか…。)





『はい。帰ったら、一緒に遊びましょう!』

「やったぁ〜!」

「…………。」



『じゃあ、行ってきますね。』

「いってらっしゃい、お姉ちゃん!」


ヨミはキルアの頭を撫でながら言った。

いつもより優しく


長く


そして愛しそうに。




ヨミが手を離すと、イルミがキルアに先に帰るよう言った。

キルアが見えなくなるまで見送ってから話し出す。


『それじゃあ、イル兄もお元気で。』

「ヨミ。」


手首を掴まれるヨミ。

突然のことで驚くが、次の言葉でさらに驚かせれることになる。









「本当に帰ってくる?」




ドキッ




『え……?どうしたんですか突然。』

「なんとなく。」

『なんとなくって……。
帰ってくるに決まってるじゃないですか。』



誤魔化そうと笑うが、いつもと違う違和感にイルミは気づいていた。


「ヨミ。」

『はい。』
(今日はよく名前を呼ばれる日ですね。)









「好きだよ。」


『!』


イルミの言葉は突拍子もなく発されることが多いが、いくらなんでも脈絡が無さすぎだと
ヨミは思った。

だけど、その言葉に反抗する気は全く無かった。



『私も、イル兄が好きですよ。』


「…そっか。

もし帰ってこなかったら、ただじゃおかないからね。」

『だから、帰ってきますってば!
私の帰る家は、ここしかないんですから。』

「そうだよね。ならいいか。」


そしてイルミは、さっきヨミがキルアにしたように、ヨミの頭を撫でた。


(こうしてもらうのも、これで最後ですね。)

「いってらっしゃいヨミ。」

『行ってきます。』


イルミと言葉を交わすと
振り向かず、真っ直ぐ門へと向かった。




空は既に赤く染まっていた。

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