dream-wj
どうしてすべて消していってくれなかったの?
"ブーブーブー"
そんなとき、定期的な機械音、携帯のバイブが鳴った。
"笛吹"
昔の同期であり、飲み仲間でもあった奴の名前が小さいサブ画面に点灯していた。
ぼーっとした状態のまま、電話に出ると、笛吹の声が聞こえてくる。
「あいつが死んだ」
ただそれだけ、一言だけ告げられる。
「…笛吹らしくもない」
「何がだ?」
「冗談、言わないでよ」
笛吹がそんな冗談を言う奴じゃないと知りながらも、兎に角、認めたくなかった。
ここで笛吹が冗談だと言ってくれさえすれば、TVの件は誤報だと思うことが出来る。
「冗談なんかじゃない」
「嘘」
「嘘じゃ…」
「だって、あの人が死ぬなんて考えられない」
叫ぶように言って、一方的に電話を切った。
携帯を投げるように机に置けば、近くに灰皿があった。
そこには煙草の吸い殻が、無理矢理火を押し消したような吸い殻がひとつ、残っていた。
衛士の、ものだった。
アナウンサーが、先程からずっとニュースを読みあげている。
夢、だと思いたかった。
だけど、笛吹から着信があったのも、ニュースの放送も、全部、事実なのだ。
そして、目の前にあるひとつの吸い殻でさえ。
「バカ…っ、」
どうせいなくなるのなら、煙草の吸い殻も、ニュースも、すべて、消していってくれれば良かったのに。
そんなことを思いながら、なかなか流れない涙と共に、乎咽を漏らして、私は崩れこんだ。
すっかり忘れていた目玉焼きは、何だかとても、焦臭くなっていた。
end...
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