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オリジナル小説「暴走Aクラス」

街についた頃には
随分と日も落ちて
家々からは、小さな笑い声やら、美味しそうな夕飯の匂いが零れて、恭輔の鼻を包んだ。
恭輔は、ずずっと鼻を啜った。
この辺りの住民はみな、上流階級の者達ばかりでいくら学園領だと言ってもなかなか学生が訪れることはなかった。
しいて言えば、やはり学園外でも勉強する意欲のある者か、しなければいけない者が塾に訪れる程度だった。

当然の如く、恭輔はその後者であった。

「・・・っと、ここがそうか?」

十字路を3回、左、右、左と曲がり、朱鳥居が三つ見える丘を上ったところに、その塾はあった。

その建物は普通の民家と違う、なんとも知れない異質な気配を放ちつつも、釈然と丘に建ち、少し下に見える民家を眺めていた。


<学習塾:小町堂>少なくとも、今まで恭輔が見てきた建物の中では、どれにも属さないそいつは、恭輔の腰程しかない木に、建物の存在意義、そこが塾であるということを、魔針で幹を削り、看板としてお供させていた。


家が生きてるみたいだ。


全てを木と、技術のみで作り上げたようなその塾は魔法の不協和音が響いて来ず唯一、魔法で彫られた字だけが孤立しているかに思えた。


先程まで街に溢れていた住民くささや魔法の気配とは一線を画したこの空間に、恭輔は戸を開ける前に、息を飲た。


先程からどことなく感じていた<塾>という気だるさはどこかへ消え失せ、頬からは一滴の汗が流れた。

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