SS
ずるい(ロー*微々裏)
「デュー…」
彼の低い声がわたしの耳を捕らえる。
私からこぼれているのは、彼が与えてくる刺激に悶える声。
彼が率いる海賊団がこの島を訪れて、もう一週間になる。
夜の度に店に現れては、カウンター越しに口説かれて、つい、彼のとったホテルの部屋に来てしまった。
彼の声が好きだ。
顔も
身に纏う雰囲気も。
彼のような人が、私みたいなしがない酒屋の一人娘を口説いて何になるのだろう。
その辺の娼婦たちだって、喜んで抱かれたに違いないのに。
彼の腕の中で考えるのは、そんなことばかり。
自分で考えてるくせに、悲しくなった。
彼の低い、苦味のある声が、甘さを含んで…
私以外の女にもこの声で語りかけていたのかと思うと、胸がチクリと痛む。
「なぁ、デュー、俺の船に乗れよ。お前を俺のそばにずっと置いときてぇんだ、頼むよ。」
行為の後、腕枕をしてわたしの髪をいじるローが言った。
「侍らす女なら、他にいくらだっているでしょ。」
そう冷たく返すと、彼がぎゅっと私を抱き寄せた。
――…ずるい。
この人はずるい。
お願いだから、今は強がらせてよ。
あなたにもっと、甘えていたいの。
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