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親指筆頭
ようこそ、我が城へ



正座。


何故自分の部屋で正座なのか。
目の前に伊達政宗がいるからだ。
一応、一国の主だし、お客様だし……っという可笑しな理由での正座。



「すいませーん」
「An?」



片手を挙げて質問体勢。
彼はテーブルの上にいる。
私のメイクボックスに足を組んで座って。
もちろん私のメイクボックスは、巨大でもなければ普通サイズ。
三面鏡が持ち上がり、左右に開けばボックスも立派なドレッサーになる。
今は閉じられているソレが、彼の背凭れになっている。
ここまででお分かりだろうか。
つまり、目の前の伊達政宗は……



「ちっちゃ!!」
「Shit…!!」



大きさは10センチあるか、というところだろうか。
私の携帯とほぼ同じである。
ちなみに私の携帯は、スタンダードなスマートフォンである。
並べると、同じだったのだ。
大きさが。

そんな伊達政宗。
声や仕草は全くゲームのまんま。
どうやら戦国BASARAから抜け出して……来たみたいだ。

でも何と言うのか、足の長いスリムな伊達政宗ではなくて、少しずんぐりとした感じ。
どっかで見た事がある気がするのだが……
むぅっと顔を近付けて考える私の額に、剣の鞘でビシっとして来る。



「ちょっと!今、考えてんだから!ってか痛い!!」
「アンタ、あんまり顔近付けんなよ」
「何で?」
「Kissしちまうぞ!」



恥ずかしい、なんて頭になかった。
出て来るのは腹の底からの笑いだけ。



「アハハハハ!」
「テメェ……何が可笑しい」



こんな小さな伊達政宗に言われても、所詮はミニマム。



「あっ!」



思い出した。
あれだ、あれだ。
ノートパソコンをイジると出て来たのは……



「政宗、ちょっと見て!」
「アン?」



画面を見せると案の定、驚いた顔。
そこに映っているのは、BASARAのワ○コインフィギュア。
そう、あれの伊達政宗そのまんまの姿なのだ。
少々高さがあるだけで、二頭身なところは全くの一緒。



(か、かわい過ぎる……)



当の政宗は自分のそんな姿を見てか、地味にプルプルしていた。
結構ショックだろうな。
小さいだけじゃなく、二頭身なんて。



「で、どうしてあんなところにいたの?」
「……俺にもさっぱり分からねぇ」



気付いたらあの場にいて、私がカランカランってしたばっかりに、衝撃に耐え兼ねて落ちて来てしまったらしい。
ラッキーというか、不幸と言うか……



「でも、俺にとってはLuckyだぜ」
「何で?」
「教えてやるよ」



よっ!とメイクボックスから飛び降りて、テーブルの側に置いてある私のバッグに触れた。
ジャラリと音のするそれはストラップ。



「あぁー…」



それは私のお気に入り。
伊達の家紋がデザインされたストラップ。



「これを見て確信した。昼間は真田幸村目当ての女ばっかだったからな」



そりゃ、そうだ。
真田幸村ゆかりの地だもの。
かくいう私も、それが理由であそこに行ったのだから。



「で、アンタの名は?」
「あ、ごめん。忘れてたね。私は柊雪兎」
「雪兎か。いい名だ」



ふっと笑った政宗がちょっと格好良くて、ほっぺをプニっと押してみる。
柔らかくて、弾力があった。
ぬいぐるみや人形とはまた違う心地良さ。
確かにそれは人肌の感触。



「オイ!やめろっ!」
「ふふっ」



他愛のない話をした。
突然知らない場所にやって来て不安だったろうに……
でも彼はきっと柔軟だ。
何処でもやって行ける。



「で、雪兎」
「何?」
「俺を拾ったからには、ちゃんと世話してくれるんだろうな?」



そういう事になるだろう。
このまま、あの神社に戻して放置出来るほど冷たい心ではない。
それに、せっかく出会ったミニ宗を、他の誰かに渡す気にはなれなかった。
意外と肝が据わっている女。

その名を「柊雪兎」という。



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