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月下の夜想曲
敦盛side



今夜も空に聳える月を見ながら笛を吹く。
最近は兎琉殿が傍らにいたが…今はいない…。
神子や八葉の方達と、景時殿の邸に住むようになってから、毎夜繰り返されていた兎琉殿との時間。
…今は、一人…。



あの時も一緒に居た。
明葉殿と兎琉殿、人ならざるモノの三人で宿を出て行かれる時。
私は、止めるべきなのではなかったか…。
あの日から毎夜、月に向かってそう想う。



『それはね…。
私達の世界では、゙懺悔゙って言うんだよ…』



いつの事だったか…。
こんな満月の夜、兎琉殿と二人、月を見ながら話をしていた時にそう言われた。
何気ない話からだったと思う。
怨霊として蘇った私に、兎琉殿はそう言った。


懺悔…過去の罪を告白し、悔い改めること…。


声は笑っていたが、どことなく…泣いているのではないかと思わせるような顔で、私が言った事に返してきた。
とても儚気で、今にも消えてなくなってしまいそうな…そんな空気を纏って…。



「敦盛。そろそろ寝なさい」


「…リズ先生っ!!」



宿の屋根の上。
いつもなら、そう言って現れるのは…兎琉殿だった。



『敦盛?』



そう想いに耽っていると、兎琉殿の姿と声が現れる。
帰ってこられたのかっ!!
ただ、素直に嬉しく…そう感じた時だった。



「どうかしたのか、敦盛?」



目の前に居たその人は、居るわけがないあの方の幻影が重なったリズ先生。
幻影を見るとは…思わなかった。



「もっ、申し訳ありません…リズ先生!!」



兎琉殿の姿が消えた場所には、リズ先生が腰をおろしている。
驚きに、急いでお詫びの言葉を述べれば面越しに微笑まれた。
頬が熱を持つのを感じる。



「敦盛、兎琉が出て行った事を悔いる必要はない。
何か考えがあってした事。
兎琉を信じなさい」



私の頭に、リズ先生の大きな手が乗せられる。
そしてゆっくりと、そう紡がれた言葉に、何だか心が軽くなるのを感じた。
ただ今は、兎琉殿が無事だと信じよう。
またすぐに、お会いできると…。



「リズ先生、兎琉殿は…御無事でしょうか…?」



そう言った私の言葉に、空に聳える月へと視線を向けているリズ先生が、面越しに微笑まれて言葉を紡ぐ。



「きっと無事でいる。
心配なら、楽を奏でると良い。
兎琉が好きだと言ったお前のその笛で…」



そう紡がれたリズ先生の言葉にひとつ頷き、懐から少し端を覗かせていたそれへと手を伸ばす。



『私、楽器類はてんで弾けないのよっ!!
その代わり、唄は得意なんだっ!!!』



そう言った兎琉殿。
私が吹くその中で、あなたが一番好きだと言った楽を、あなたが帰るその日まで、何度も奏で続けよう。
それが道標となるように………。









ただ今は、あなたの無事を楽に乗せて…。









初敦sideっ!!
ってか、敦盛と絡ませないとリズ先生の出番なさそうな気が…汗
09/09/19

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