説明
「ほぉ〜この童共が歴史に名を残した義経に弁慶…ね」
「何が言いたいんですか…あんたは…。
しかも、あなたも史実の人物だって事、忘れてません…?」
師匠、安倍明葉こと安倍晴明がそう口を開いて言った言葉に、思わず現代の歴史を口にするんじゃないかとツッコミを入れる。
私の真意を悟ったのか、師匠はハハハっと空笑いをして話を変えてきた。
「さて、私の不肖の弟子がお世話になっているね。
これは手土産だ。
兎琉の大好物だよ」
そう言って師匠が差し出したのは、ぎゅうぎゅうに包まれた風呂敷。
風呂敷って…せめて現代からきたんだから、紙袋とかインパクトあるのにすれば良いのに…。
内心そんな事を考えながらその包みの結び目を解く。
その中から出てきたのは、大量の現代のお菓子。
「ポッキーにポテチだぁぁあ!!!」
バサバサと音を立てて雪崩るお菓子の数々を見て、望美が嬉しそうに歓喜の声をあげた。
私は、それを見てゴミの事を考える。
ビニールって…燃やすと有毒だよね…?
どうしよう…。
そう思った時だった。
「さて兎琉。
先程は何をやっていたのかな?」
笑顔でそう言ってくる師匠の目は鋭く、嘘などは許されないと言っているように思えた。
嘘をつく気はまったくないが…何でだか師匠の目はそう言っている。
はぁ〜っと一息つき、相変わらず私の肩を抱くヒノエを仰ぎ見た。
何か…怒ってる…?
険しい顔でいるヒノエの顔は、どこか機嫌が悪そうに見えた。
「えっと…この時代の黄が二分しちゃったんですけど、その片割れの白い方が…やっばいくらい禍々しいんです…。
だから、八葉の気を使って昔あなたに教わった補助結界の練習を…」
朔が白龍を散歩へ連れ出しているおかげで、普通に説明できる事に幸せを感じる。
簡潔に説明をすれば、顎に指を這わせて思案顔を作る師匠。
何を考えているのだろうか…??
「つまり、白いのがいるおかげでお前は自由に動く事もままならないと」
真剣な顔でそう言ってくる師匠が、視線だけを私へと向けてくる。
いや、寧ろ私にではなく…私の横だ。
その視線を辿ると、私の横に居る彼に行き当たる。
師匠は、ヒノエを見てる…??
…何故…ヒノエ?
「成る程…。うん、わかった。
兎琉、陽貴を喚んでくれるかな」
ふわりと笑顔を作ってそう言ってくる師匠の顔は…まるで…まるで…「早く今すぐ喚・べ・っ」と言っているようにしか見えない。
これに反抗したら…きっと、私の命が危ない気がしてくる。
だから、首にかけている契約の証を触り陽貴を呼び出す。
朱く…淡く光り出すそれから、一粒の光りの塊が出てくる。
それが人形をとり、天女の格好をした陽貴が姿を表した。
「清明、久しいのぉ…」
「陽貴…相変わらず綺麗だね…」
そんな会話をして、何だか二人の間に只ならぬ空気が醸し出される。
やってられん…。
「何だか、良い雰囲気だね」
私の耳元でヒノエがボソリと呟く。
それを聞きながら横目に二人を見た。
まわりにこれだけの人数がいるにもかかわらず、二人の会話は聞こえてこない。
微かにボソッと聞こえてくるのを聞くのでやっとだ。
それなりに会話のないようも気になるけれど、師匠の事だ、はぐらかすに決まってる。
「という事で皆に頼んでくれるかな?」
「承知致しました…。
そのようにお伝え致します」
相変わらず師匠相手だと畏まってるな…陽貴は…。
二人のやりとりを傍観した後、すぐに戻るのだと思っていた私は、ふわりと微笑んで私へと寄ってきた陽貴に驚いた。
「姫、清明がきたからもう大丈夫…安心なされ。
妾は皆に話がある故、これで失礼するよ。
天地の朱雀、姫をこれからも守るのですよ。
ではな姫、それと…清明…」
そう言った陽貴が、私の頭を撫でて微笑み、師匠をチラリと見やってから姿を消した。
すぐに話さなくちゃならない事って…なにっ??
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