勇者の従者は魔王様!?
始まりは世界の危機!?
ラピスへの道のりはかなりスムーズに、とはいかず。
渡るはずの川の水は勢いよく洪水しているし、掛けられた橋はそれらに流されたのか見事に破壊されている。
おまけにまた魔物は出るわ雨がどしゃ降りになるわで優姫はげんなりとしながら歩いていた。
「何なんだ今日は……」
疲れきったようによぼよぼと歩く優姫。一方で黒助は逢った時と変わらず飄々と優姫の前を歩いている。
「お前一体何者だよ……」
「健康な男子です」
優姫の呟きに肩越しに振り返った黒助はにこりと冗談めかしに言った。
「ラピスまではあとどのくらいなんだ……」
「えーと、十五キロと五百二十一メートルだよ」
「詳しい回答をありがとう」
「どういたしまして。どうする?もう暗いし、雨酷いし……どっかで宿とって休む?」
ザーザーと降る雨でびしょ濡れになった髪を掻き上げる仕草が様になってるなーとか思いつつ、優姫はとんでもないと首を横に振った。
「宿は……いや、お前が疲れてるなら泊まればいいさ。けど私は……いいや」
「どうして?」
首を振った優姫に黒助は首を傾げて見せた。
「宿は金がかかるだろ?今は無駄遣いは出来ないんだ」
ふーんと呟く黒助。そしてぽんっと手を叩いて、
「じゃあ俺がとった部屋に泊まりなよ。ね?」
「はあっ?」
黒助の提案に思わず一歩下がった。こんな男みたいな性格でも、一応恥じらいはある。
「だってこんな雨の中女の子放り出すなんて俺には出来ないんだもん」
だもんって……。
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