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「すみません。竜 巽の病室って何処ですか」
 全面が白色に塗り固められたロビーにて、おれは受付に向けてそう言い放った。受付の小太りの女性は軽く目を見開いて、慌てて病室番号を言った。確認をしてないことから、彼女は事前に巽の病室を知っていたことになるが、彼女が巽の担当なのだろうか。
 なんだか気になる。だが今はいち速く巽の無事を確認したい。
 おれは女性にお礼を言って、病室へ向かった。
【413号室 竜 巽様】
「……………ここ………」
 焦る気持ちを押さえ付けて、個室の扉を開けようとドアに手をかけた。横にスライドしようと力を込めた瞬間、おれの干渉ではない力が働いてドアが開いた。
「ん? 君は…………好樹くんか。久しぶりだね」
 扉から覗く人物はスーツを着こなした男。深く落ち着いた声に、シワの出始めた顔。髪は染めているのか真っ黒だ。彼は巽の父親。タツグループの社長。
「ぁ…………はい。お久しぶりです。あの、巽くんは………」
 おれが中を覗く前に扉は閉められてしまった。
「息子は大丈夫だ。内臓損傷もないし、骨折もそれほど酷くはない。巽のお見舞いかい? ありがとう。しかし今巽は寝ていてね。済まないが、今日は帰ってもらえるかな」
 彼は話ながらおれの肩に手をついて、退出を促す。
「あ、あの! 一目、顔だけでも見せてはもらえないですか」
「……………いや。済まないが」
 かれは上げた眉をすぐにもとに戻して、不可の言葉を出した。
「家まで送っていこう」
 能面のような顔で彼は言った。


 

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あきゅろす。
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